神宮外苑の再開発に「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」ユネスコ諮問機関が「世界に類を見ない文化遺産」(HUFFPOST 2023年09月07日 11時52分 JST)
ユネスコの諮問機関である国際イコモスが、神宮外苑の再開発に対しヘリテージアラートを出し、東京都や事業者に見直しを求めています
Satoko Yasuda 安田 聡子
ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)と日本イコモス国内委員会が9月7日、東京・神宮外苑の再開発に対して「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」を出した。
パリに本部を置くイコモスは、世界の文化財保護に携わる国際NGOだ。ヘリテージアラートは危機的な状況に置かれた文化遺産に対する警告や、保存、解決策促進のために出される。
イコモスは今回のヘリテージアラートで「世界的に有名な公園である神宮外苑で3000本もの樹木が伐採され、市民との協議なしに高層ビルが建てられようとしている」として、事業者や東京都などに対して計画を見直すよう求めている。
神宮外苑を「卓越した文化遺産」と評価
神宮外苑は約100年前に、「永遠の杜」である神宮内苑の対になる「人々に開かれた杜」として、国民の寄付や奉仕活動によって作られた。
イコモスは「市民によって作られた神宮外苑は、世界の都市公園の歴史において、類を見ない卓越した文化遺産だ」とその価値を評価。
さらに、都市公園の役割について「人々の憩いの場であり、豊かな生物多様性を維持し、ヒートアイランド現象を和らげ、大規模地震などの自然災害時の避難所としての役割も果たす」と説明している。
神宮外苑の再開発では三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本スポーツ振興センター(JSC)が主な事業者となり、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替えるほか、高さ190メートル、185メートル、80メートルの高層ビルが建築される計画だ。
事業者によると、その過程で743本の高中木(3メートル以上の樹木)が伐採される。また、ツツジなどの小さな低木(3メートル未満の樹木)を含めた伐採数は、一部エリアだけで約3000本になる。
イコモスは「世界の他の公園にはない歴史を持つ神宮外苑が、都市再開発によって差し迫った脅威にさらされている」と警告。
ヘリテージアラートを出すとともに、事業者や東京都、自治体、国に対し以下の5つを要請している。
1.事業者の三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事への要請:神宮外苑の再開発計画を撤回し、国際的企業や宗教法人、スポーツ促進団体として、社会的、倫理的責任を果たすこと
2.東京都への要請:高層ビルの建築が市民の公園利用の権利を永遠に奪うものであるという事態を鑑みて、神宮外苑再開発に関する都市計画決定を見直し、環境アセスメントの再審を行うこと
3.明治神宮への要請:神宮外苑が市民からの寄付と奉仕活動によって作られ、「美しい公園として永遠に維持する」という約束のもとに奉献された歴史を考慮して、プロジェクトから直ちに撤退すること
4.港区、新宿区、渋谷区への要請:将来世代の利益のために、神宮外苑を名勝指定するための取り組みを行うこと
5.日本政府への要請:神宮外苑再開発を東京だけの問題と見なさず介入すること
神宮外苑の再開発に対し、日本イコモス国内委員会は、樹木を伐採しない案を提案している。
事業者は9月から高中木の伐採を始める予定としている。ハフポスト日本版はイコモスのヘリテージアラートに対するコメントを、事業者と東京都に求めている。