解散目前“夏の政局”水面下でうごめく、小渕優子「官房長官抜擢」と小池百合子「国政復帰」

小渕優子議員・小池百合子都知事 政治・経済

解散目前“夏の政局”水面下でうごめく、小渕優子「官房長官抜擢」と小池百合子「国政復帰」(集英社オンライン 2023.06.29)

秋口にもあるといわれる衆議院の解散。それに向けて「政局は近い」とすでに多くの政党が動き出している中、にわかに熱い視線を浴びることとなったのが、小渕優子自民組織運動本部長と小池百合子東京都知事だ。

岸田首相にとって小渕氏の抜擢は「一石二鳥」

「次に解散があるとしたら、秋口。臨時国会の冒頭あたりに岸田首相が解散を決断する可能性は高い。ただ、この1カ月間で12ポイントも急落する(毎日新聞調べ)など、内閣支持率はダダ下がりしている。当然、首相は秋口解散の前に世間受けする内閣改造や党人事を断行し、支持率アップを狙うでしょう」(自民党関係者)

その目玉と目されているのが、小渕優子議員の官房長官起用だという。もし、小渕氏が官房長官に抜擢されれば、女性議員としては2人目の官房長官誕生となる。女性進出が遅れている日本だけに、この人事は世論、とくに女性の有権者から好感視されるはずだ。

全国紙政治部デスクもこう続ける。

「もともと、次の内閣改造で岸田首相が小渕氏を起用するのではという観測は今年の春先から永田町にくすぶっていました。その観測がさらに強まったのは今年3月。都内で菅義偉前首相と韓国の尹錫悦大統領が会談した際、岸田首相が小渕氏も出席させてほしいと菅さんに強く要請し、会談の同席が実現したんです。首相が次の内閣改造で小渕氏を厚遇する前触れと受けとめる向きは少なくありませんでした」

小渕氏の抜擢は、ポスト岸田への意欲を隠さない茂木敏充自民幹事長へのけん制にもなるという。

「茂木幹事長が5月に訪米し、ブリンケン国務長官ら、バイデン政権の要人とご満悦の表情で会談したことを首相周辺は心よく思っていない。党幹事長としていまは首相を支える立場なのに、ポスト岸田への色気を出しすぎだと反発を買っているんです。

小渕さんは茂木派の領袖だった小渕恵三元首相の娘ということもあり、茂木派のプリンセス的存在。将来の女性宰相候補の声の呼び声もあがるほどです。その小渕さんを厚遇することは派閥内での人望がイマイチの茂木幹事長の台頭をけん制することにもなり、岸田さんにとっては一石二鳥というわけです」(前同)

公明の浮いた「70万票」の行方

もうひとりは小池百合子東京都知事だ。女性初の総理大臣にもっとも近い距離にいるとされた小池都知事もすでに齢70歳。都知事を2期も務める間に国政ブランクも長引き、永田町での影響力もめっきりと衰えを見せている。その小池都知事が今回の解散見送りを機に、久しぶりに政局の中心に躍り出るのでは?という見立てが浮上しているのだ。

きっかけは衆院小選挙区「10増10減」にともなう自公のさや当てだ。新設される東京28区での候補調整がドロ沼化し、ついに東京で自公選挙協力を解消する騒ぎになったのだ。

公明が前回の21年衆院選で獲得した東京選挙区での比例票は71万5000票。この票の大部分が、小選挙区では自公協力によって自民候補に回ったとされる。その威力は絶大で、もし公明票がなかったら、自民は東京小選挙区で当選した16人の自民議員のうち、7人が野党候補に逆転負けしていたというデータもあるほどだ。

ところが、自公の抗争激化で次回衆院選の東京選挙区ではこの70万票が宙に浮く可能性が出てきた。この展開を見て、「機を見るに敏な小池都知事が動く可能性がある」と指摘するのは政治評論家の有馬晴海氏だ。

「公明にすれば、宙に浮く70万票の有効活用法を探りたい。そこで関西での連携維持と引き換えに、東京でこの70万票を維新に回すというシナリオがささやかれているんです」(有馬氏)

公明は大阪、兵庫の6小選挙区で当選者を出しており、これは維新候補が圧倒的な強さを誇る関西では異例のことだ。たとえば、大阪では19の小選挙区中15で維新候補が当選しており、残る4つが公明。

ちなみに自民、立憲とも大阪小選挙区での当選はゼロだ。このように公明がしぶとく大阪の小選挙区で勝利しているのは維新と暗黙の連携が維持されているためだ。有馬氏が続ける。

「維新は公明が大阪都構想への支持や大阪市議会での協力をしてくれていることへの見返りとして、6つの選挙区での候補擁立を遠慮してきた。だから、公明は楽々と6人もの当選者を出せているんです。

ただ、維新は次の衆院選ですべての小選挙区への候補擁立を目指しており、6選挙区での公明との連携も解消すると宣言している。そうなると、公明の当選はおぼつかない。そこで危機感を深める公明が宙に浮いている東京選挙区での70万票を維新に回す代わりに、大阪での選挙協力を維持する裏取引を維新に持ちかける可能性があるんです」

公明と維新と都民ファーストがタッグ?

では、そこに小池都知事がどうからむのか?

「勢いがあるとはいえ、東京での維新の基盤はまだまだ弱い。次の衆院選で現状の25から30に増える小選挙区すべてに擁立できるほど、候補者の発掘も進んでいない。そこで公明に加え、東京都で実績のあるファーストと連携すれば、自民や立憲の候補に勝てると小池さんが維新に働きかけるというわけです。

ファーストも維新も改革志向の都市型政党で、トップが自治体首長という共通点がある。しかも、地盤が東京と大阪で食い合いになることもない。小池さんも今年で71歳。国政復帰のチャンスはもうそんなに多くないはず。政局を読む目は確かな小池さんだけに、これが最後のチャンスとばかりにファーストと維新の連携に動く可能性は否定できません」(有馬氏)

すでに秋口解散があると見込んで、多くの政党が動きだしており、「この夏は政局になる」(前出・自民関係者)との見立ては少なくない。はたしてその政局の中心に小渕、小池両氏の姿はあるのか? 要注目だ。

取材・文/集英社オンラインニュース班