日経平均株価バブル崩壊後高値更新 どこまで続く? 年末3万3千円予想も米景気の見極めは7月以降

日経平均株価バブル崩壊後高値更新 どこまで続く? 政治・経済

日経平均株価バブル崩壊後高値更新 どこまで続く?年末3万3千円予想も米景気の見極めは7月以降(AERAdot. 2023/06/02 19:34)

2日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比376円高の3万1524円で終えた。5月30日につけたバブル経済が崩壊した後の高値(3万1328円)を上回り、約33年ぶりの高値水準だ。株価はどこまで伸びるのか。

「日経平均株価は今後1~2年をかけて3万円台後半をめざす動きになるでしょう」

証券ジャパン調査情報部の大谷正之部長は、上昇トレンドは続くとみている。

その理由について、まず、海外投資家の姿勢を挙げる。東京証券取引所によると、海外投資家は5月第4週(22~26日)まで9週連続で日本株を買い越した。9週連続の買い越しは6年ぶり。海外投資家が足元の株高をけん引してきた格好だ。           

「日本企業はこれまで内部留保をため込むだけで、資産を有効に活用できていないとみられていました。ところが、政府や東京証券取引所が、統治体制や株主還元に対する改革を企業に求めてきたこともあって、日本企業の姿勢は外国人投資家の目で見ても分かるように大きく変わった。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が4月に来日して商社株への投資比率を増やしたことも、日本株が見直されるきっかけになりました」(大谷さん)

日本経済では物価の値上がりが続き、デフレ脱却が意識され始めていることもある。インフレ局面に入れば、相対的に価値が下がる現金や預金よりも、株式や不動産といった実物資産を持っている方が資産形成には有利だ。さらに株式投資には、2024年から投資信託などの運用益が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)が拡充されるなど、制度面の追い風も吹く。積み立て投資など若い投資家層の関心も高くなっている。

追い風となっている要因のいずれも、一過性のものではありません。さらに、半導体や電気自動車(EV)、脱炭素といった5~10年の長期にわたって拡大が期待できる市場が経済を押し上げている。こうした市場には多くの日本企業が食い込んでいます。足元の株価は急激に上昇してきたので一時的に調整する場面もあるでしょう。しかし、景気は新型コロナウイルスによる停滞から抜け出し、正常な循環サイクルに回帰しつつあり、次の回復ステージに向けて株価も新しい上昇トレンドが始まっているとみています」(同)

日本株の先行きを見通すうえで気になるのは米国経済だ。りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは言う。

「米国の景気が急失速するのか、ソフトランディング(軟着陸)するのか、その見極めがつくまでは、海外の主要市場が一進一退する中で日本株だけがどんどん上がっていくようなことにはならないでしょう」

米景気の先行きをめぐり、市場関係者の見方は分かれている。米国のインフレ圧力は当初想定していたよりも強く、米米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの姿勢を緩めていないからだ。物価の値上がりを抑えるには金利を引き上げる必要があるが、景気を冷ます副作用も生じる。

市場関係者の間では、FRBは6月13~14日に予定する米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを見送るとみられているものの、その次の7月の会合では利上げを実施するとの見方が強い。FRBの利上げの姿勢が長引けば、それだけ景気にも響く。

とはいえ、黒瀬さん自身は、米景気はソフトランディングに向かうと考えている。

「米国の中堅銀行3行が相次ぎ破綻した影響で沈静化に時間はかかっていますが、米政府は預金保護や公的資金の注入といった形で傷口を広げないように対処しています。企業向けの融資動向などにどう影響するかを引き続き見守っていく必要はありますが、信用不安が大きく広がる可能性は少ないのでは。米国では再生可能エネルギーや半導体関連の大規模な投資計画が進んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大時に支給された給付金もまだ相当程度残っているとされ、これが消費に回れば景気を下支えする。秋口にもソフトランディングへの見方が強まれば、株価も上昇に向かうでしょう」(黒瀬さん)

黒瀬さんは、米景気の先行きに見極めがつく秋口まで、日経平均株価は2万9千円~3万1500円の値幅での一進一退の取引が続くものの、その後、ソフトランディングへの見方が強まれば年末にかけて3万3千円を目指す展開に向かうと予想する。

前出の大谷さん、黒瀬さんとも、日本株について“下値は堅い”印象だという。これまでに買い遅れた個人投資家は少なくなく、足元の上昇局面で買われている銘柄はまだ半導体や輸出関連など一部の大きな会社に限られている。

物色される銘柄や投資家層の一段の広がりがあれば、さらなる株価の上昇が期待できそうだ。

(Aera.dot編集部・池田正史)