マイナ保険証「混乱が起こる」歯科医師が経験したトラブルの実態 「とても実用に耐えるものではない」

マイナ保険証を読み取る端末のトラブルに見舞われた石毛清雄さん=31日、千葉市稲毛区で 社会

マイナ保険証「混乱が起こる」歯科医師が経験したトラブルの実態 「とても実用に耐えるものではない」(東京新聞 2023年6月1日 06時00分)

健康保険証とマイナンバーカードが一体化した「マイナ保険証」を巡るトラブルが相次ぎ発覚し、反対論が増す中、従来の保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する法案が31日の参院の特別委員会で自民などの賛成多数で可決された。

千葉市稲毛区で40年近く歯科医院を営む歯科医師の石毛清雄さん(67)もトラブルを経験した1人。「とても実用に耐えるものでない。可決はとんでもない。保険証を廃止すれば混乱が起きる。保険証は残すべきだ」と憤った。

◆「10割負担を請求、できるわけがない」

石毛さんは保険証の廃止に反対だが、政府がマイナ保険証の普及に突き進むのを受け、3月からマイナ保険証を読み取る端末の使用を始めた。

ところが5月に入り、端末の画面に「接続を待っています…」という表示が出たまま、使えなくなるトラブルに見舞われた。一晩その状態が続き、翌日に設置業者に電話で問い合わせ、端末に接続しているコンピューターを再起動するよう指示され、その通りにして再び使えるようになったという。受信データが多いのが理由と説明を受けた。

こうしたトラブルはさらに2回発生。3回目は患者がマイナ保険証を端末に提示しようとして気付いた。再起動しても使えるようにならず、保険証を提示してもらい診療した。端末が再び使えるようになったのは、患者が帰った後だった。

石毛さんは「トラブルがいつ起きるか分からない。再起動しても、どれくらいで使えるようになるか分からない。国は保険証が確認できなければ10割負担を請求しろと言う。しかし、3代続けて通う患者もいる、地域密着の医療現場でそんなことができるわけがない」と話す。

◆高齢の患者、本人確認できない場面も

また、高齢者が使いづらい仕組みになっているのを問題視する。高齢の患者がマイナ保険証のパスワードを忘れていたり、顔認証をうまくできなかったりして、本人確認ができない場面も見た。「パスワードを3回間違えるとカードが使えなくなる。国は10日で新しいカードを出すと言うが、その間は無保険。何かあったとき大変」と心配する。

法案審議の最中にトラブルが相次いで発覚した際、国が責任を民間事業者に負わせたり、省庁間で押しつけ合ったりしているように見えた。「保険証を廃止するなら、マイナ保険証がトラブルなく普通に使えるようにしてからにするのが当たり前。国が自らの責任に向き合わないなら、まともな仕組みはできない」