<Q&A>入管難民法の改正、政府案と立民などの対案を比べると…難民認定も収容でも違い

入管難民法改正案の衆議院での採決にあわせ、座り込んで抗議する人たち=東京・永田町で 政治・経済

<Q&A>入管難民法の改正、政府案と立民などの対案を比べると…難民認定も収容でも違い(東京新聞 2023年5月9日 20時02分)

入管難民法改正案が9日、衆院本会議で可決されました。立憲民主党などの一部の野党は問題が多いとして対案を参院へ提出しました。政府案の問題点や今後の論戦の行方を探りました。

Q 難民などの支援者が懸念しているのは?

A 日本の難民認定基準は厳しく、難民申請をした人に対し、難民と認めた難民認定率は2021年で0.7%と、他の先進国の約20〜60%台と比べて極端に低くなっています。政府案は厳しい認定基準を変えずに申請3回以降の人を強制送還できるようにします。「法案が通れば本来保護されるべき人が送還され迫害される」(難民問題に詳しい大橋毅弁護士)など支援者の危機感は高まっています。

Q 対案は?

A 出入国在留管理庁(入管庁)が行ってきた難民認定を、独立した「難民等保護委員会」に担わせます。不法滞在者の排除を目標としてきた入管庁に難民保護を求めるのは無理があるというのが立憲民主などの考えです。認定基準も国連の基準を基に策定する方針です。これで保護されるべき人が適正に難民認定されるとみています。

Q 収容施設の在り方は?

A 現在、外国人の収容期間や待遇は入管庁が裁量で決めており、支援団体などはこの体制が人権侵害の温床とみています。

政府案は収容の長期化を抑制するため、3カ月ごとに収容の可否を検討するとしています。しかし、国連の特別報告者は4月に日本政府に書簡を送り、個人の自由を奪う「収容」という行為に裁判所が関わらない体制について人権侵害の疑いが濃いと批判しました。対案もこの考え方に沿い収容の可否は裁判所が決め、期間に上限を設けるとしています。

Q 在留資格がなく、医療を受けられない子どもへの対応は?

A 政府案には特に改善策は盛り込まれていません。対案は、日本で長く育ってきた子どもや保護者には子どもの権利条約などを積極的に考慮して在留特別許可を検討することを条文に明記しています。

Q 審議の行方は?

A 政府は5月中の法案成立を目指しているといわれ、中旬から参院論戦が本格化する見通しです。同様法案が提出された21年、収容施設内でのスリランカ人女性ウィシュマさんの死亡などもあり、市民の反対の声が高まりました。最終的に政府は成立を断念しました。今回も反対のデモや署名運動が広がっています。