定年後を幸せに過ごすために捨てるべき4つのもの

定年後を幸せに過ごすために捨てるべき4つのもの 社会

定年後を幸せに過ごすために捨てるべき4つのもの(MONEY PLUS 2023/05/07)

自分のために生きていく

長尾義弘

定年後は、仕事も少なくなって自由な時間も増えるし、65歳になれば年金も入ってくるので、ノンビリして幸せな時間を過ごせるのでは?なんて思い描いていませんか。しかし実際の定年後の生活は、「時間を持てあまし、孤独を味わい、ちっとも幸福感がない」ということもあるのです。

いままで頑張ってきたのだから、定年後は幸せに暮らしたいと思うのは当然です。でも必ずしもそうならない理由は、定年後に「捨てられなかったもの」が残っているからです。

幸せに過ごすために「捨てる」べきもの4つを解説していきましょう。

お金の心配を捨てる

老後の大きな心配は老後資金です。その心配が要らない老後生活というだけで幸せに暮らせるというのは、想像しやすいのではないでしょうか。

「老後資金がないので、とても無理。一生お金の心配は尽きません」とあきらめていませんか?ところがちょっとした工夫で老後のお金の心配をしなくてもすむ方法があるのです。

じつは、老後資金を心配する大きな原因は「収支のバランス」が合っていないからです。収支のバランスが合っていれば老後資金は減らないので、ずっとお金の心配をしなくてもいいのです。

では、収支のバランスをあわせる方法は、「支出の見直し」つまり節約です。そして「収入の増加」つまり年金の増額です。年金の増額なんてムリ、と思っていませんか? でも、それは可能です。それは「繰下げ受給」をすることで年金を増額させることができます。

1年間受給を遅らせると8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げることで42%の増額です。もし、夫婦の年金額が250万円だとすると70歳まで繰下受給をすると355万円になります。あとは家計の節約をすることで、なんとか収支のバランスを取ることができるのではないでしょうか。

これに成功すれば、「お金の心配を捨てる」ことができます。

「家族のため」「会社のため」を捨てる

20代からずっと60歳までの約40年間を働いてきてお疲れさまです。そこまで続けられたのは、何がモチベーションだったのでしょうか?「家族のため」「会社のため」という大きな目的があったのではありませんか。でも定年前後からは、その目的は変わってきます。子どもが就職をして独立をするとその役割は果たしおえています。また配偶者も年金を受け取るようになると、ある程度の役目は終わります。「会社のため」というのも、退職をしたら終わりです。再雇用は、正社員ではなく、期間が定められた非正規社員なのです。

ここからは、「自分のため」に働くということがモチベーションになります。そう考えると自分が満足を得る仕事でいいのです。やりたい仕事をすると仕事の満足感も増しますし、幸福感を得られるのです。

「自分のため」というやりがいのある仕事を見つけましょう。

肩書きを捨てる

以前の「肩書き」はできるだけ早くを捨てることが、定年後の幸せに繋がる第一歩です。

定年といっても仕事を完全にやめるのではなく、再雇用や再就職などで仕事を続ける人が多いと思います。その場合に以前の肩書きをいつまでも引きずっていて、偉そうにしていたり、役職だったという気持ちでいたりすると煙たがられるだけです。

そして以前の肩書きとのギャップで自分自身の気持ちの整理がつかず、ずっとモヤモヤしながら仕事を続けることになります。おのずとモチベーションも落ちます。周囲から遠ざけられ、孤立してしまい、さらに不機嫌な態度になってしまうという悪循環に陥るのです。

孤独になると、幸せから遠ざかってしまいます。

人間関係を捨てる

定年をキッカケに、人間関係も変わってきます。それまでは、仕事を通しての人間関係だったと思います。名刺を通しての人間関係とも言っていいでしょう。

しかし、定年後はどうしても仕事関係の人間関係は薄くなってきます。そのかわりに趣味を通した友人や地域の友人など、新しいコミュニティでの付き合いが増えてくると思います。

逆に言うと、仕事関係で嫌だと思った友人とはもうつき合わなくてもいいのです。ムリに嫌な人とゴルフに行かなくても、気の合う仲間とゴルフに行く方が楽しいはずです。

気が合わない人、苦手な人とつき合うのは、精神的にも負担になっていたのではありませんか? それをしなくてもいいのです。

定年後は、もしそういう人に誘われても、断ることができます。会社のため、家族のために仕事をすることを捨てたのですから、自由に人間関係を選ぶことが可能なのです。

なかには定年退職をして何年も経っているのにいまだに部長風を吹かせている人がいますが、そういう人とは、つき合わなければよいのです。また会社にはOB会なんてものがありますが、それに参加するといまだに役職のランクが残っています。別に嫌であったら、OB会だって出る必要はなく、自分の肩書きが外れて、気持ちのいい仲間と過ごすことを選べばいいのです。

定年前後というのは、人生の大きな節目になると思います。この時期しっかりと見つめ直して、人生の後半戦を愉しく迎えてください。

長尾義弘 ファイナンシャルプランナー
NEO企画代表。ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『生命保険 実名ランキング』など多数。