高市氏「捏造」難クセ答弁の代償に日本政治史を破壊! 総務省“トンデモ珍解釈”の危うさ

高市氏「捏造」難クセ答弁 政治・経済

高市氏「捏造」難クセ答弁の代償に日本政治史を破壊! 総務省“トンデモ珍解釈”の危うさ(日刊ゲンダイ 公開日:2023/03/09 14:50 更新日:2023/03/09 14:50)

「正確性については、行政文書であるか否かとは別の概念」──。安倍政権下で総務省が作成した放送法の解釈に関する「行政文書」を巡り、8日の参院予算委員会で高市経済安保相と立憲民主党の小西議員が再び対決。論戦を何度も中断させた「文書は本物、中身は捏造」と認めるような“珍講釈”は、日本政治史を根本から否定する危険性をはらむ。

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この日も高市氏は強気一辺倒で「少なくとも私が登場する4枚については事実ではない」と改めて主張。小西氏に対し「正確なものだということを、反対に立証してください」などと常にケンカ腰で、時には問題の文書を机にたたきつけ、怒りをぶつける場面もあった。

感情をたかぶらせる高市氏に助け舟を出したのは、総務省の幹部たちだ。今川拓郎官房長は「行政文書の中にそういったもの(=捏造)があることは考えにくい」と前置きしながらも、「文書の正確性は別。正確性を確保されたものもあれば、正確性が確保されてないものもあるかと思う」と答弁。禅問答のような解釈のよりどころは、2017年12月の「行政文書の管理に関するガイドライン」の改正だ。

当時の安倍政権は、モリカケ問題や陸自の南スーダン日報問題でズサンな公文書管理が批判を浴びたことを踏まえ、意思決定過程の検証に必要な文書の保存を「原則1年以上」に見直し。

一方、省庁内部や外部との打ち合わせ記録は「可能な限り出席者に発言内容を確認し、正確性の確保を期す」と盛り込んだ。

歴代政権の「黒歴史」がなかったことに…

この努力義務を逆手に取ったのが、8日の総務省幹部の答弁だ。問題の文書の記載内容は14年11月~15年5月のやりとり。「ガイドライン改正の前に作成された文書のため、確認が難しい面がある」(小笠原陽一・情報流通行政局長)との理屈で文書の正確性を暗に認めない。

逃げ場を与えられた高市氏は「ありもしないことを、あったかのように作ることを『捏造』と言うんじゃないか」とエラソーに言い張ったわけだが、「この抜け穴は行政文書の全面否定につながる」と危惧するのは、高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)だ。こう続けた。

「17年12月より前に記された発言内容の判定は困難との解釈を許せば、あらゆる行政文書の正当性が失われます。文科省から『総理のご意向』と記された文書が見つかった加計学園問題に当てはめると、そう迫った内閣府の幹部が『言っていない』と難クセをつければ、当時の菅官房長官が言った通り『怪文書』扱いのままでした。極端に言えば岸信介氏の外交文書内の発言に、安倍元首相が『祖父がこんなこと言うはずがない』とクレームをつける余地を与えるようなもの。都合良く歴史の修正を許す結果を招く恐れがあります」

公文書管理法は、行政文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけ、「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」を国に求めている。

「立法の趣旨に沿えば、時の政権に都合の悪い事実であっても、将来の検証に堪えられるよう包み隠さず記録に残すべき。行政文書を『黒歴史クリーナー』にしてはいけません」(五野井郁夫氏)

高市氏の「捏造」答弁を肯定するためだけに、この国の歴史を破壊するなんて許されない。