オール「3」にも届かず 黒田日銀の〝通信簿〟 エコノミストが評価

黒田日銀の〝通信簿〟 政治・経済

オール「3」にも届かず 黒田日銀の〝通信簿〟 エコノミストが評価(産経新聞 2023/3/9 18:11)

日本銀行は9日、黒田東彦(はるひこ)総裁の下で最後となる金融政策決定会合を2日間の日程で始めた。10日に公表される決定内容とともに、会合終了後の記者会見で黒田氏が在任の10年間をどう総括するかにも注目が集まる。

そこで産経新聞は金融政策に詳しいエコノミスト11人に、「黒田日銀」の〝通信簿〟を5段階評価で付けてもらった。結果は政策ごとに賛否が分かれ、平均はオール「3」にも満たない、厳しい評価となった。

通信簿ではマイナス金利など黒田氏が手掛けた3つの主要政策と、「国民・市場との対話」「総合評価」の5項目について評価してもらった。

3つの主要政策はいずれも賛否が分かれた。平均評価が「2.3」と最も低かったのが平成28年に導入したマイナス金利政策だ。民間銀行が日銀に預ける当座預金の一部にマイナスの金利を適用して手数料を課す政策で、企業などの金利負担を減らす効果があった。ただ、「金融機関の収益を圧迫し、金融仲介機能の低下を招いた」(明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミスト)といった指摘が目立った。

マイナス金利の欠点を補うため導入した、短期に加え長期金利にも誘導目標を設ける「イールドカーブ・コントロール(YCC)」は、大和証券の末広徹チーフエコノミストが「異次元の金融緩和の連続性を維持するという狙いを達成できた」と評価するなど4人が「4」と高評価を付けた。ただ、政策が長期化する中で、YCCで購入する10年物国債の利回りだけが不自然に低下するなど「市場をゆがめた」などとして別の4人は最低の「1」と評価。最も賛否が分かれた。

上場投資信託(ETF)の買い入れは、投資意欲の刺激に寄与したと評価しつつ、国債のような償還期限がないことから、金融緩和の「出口戦略」という大きな課題を残した点を問題視する声が多かった。総じて評価が低かったのは「国民・市場との対話」で、ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、サプライズの多い手法は「市場の混乱や疑心暗鬼を招いた」と指摘した。

ただ、総合評価ではデフレではない状況まで経済を立て直した功績をたたえる声も多い。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストも、金融政策の限界を指摘した上で「足らざる部分は政府の努力によって埋められるべきだった」と同情した。