首都直下型地震が起きたら、東京はどうなるのか 都内要注意エリアでの被害リスクを分析

大地震の被害は計り知れない 社会

首都直下型地震が起きたら、東京はどうなるのか 都内要注意エリアでの被害リスクを分析(女性セブン 2023.03.02 15:59)

トルコの大地震は世界中に衝撃を与えた。だが知ってのとおり、日本も地震大国。同じ規模か、それ以上の大地震がいつ起こるとも限らない。なかでも「今後30年以内に70%」の確率で発生するといわれているのが、首都直下地震──そのとき、東京に“安全な場所”はあるのだろうか。

予想されるM7クラスの首都直下地震

東京での大地震となれば、国家レベルの被害に及ぶことは想像に難くない。まずは東京の中でも特に危険な区域から、そのリスクを見ていこう。東京都の地域危険度測定調査部会会長を務める、東京都立大学名誉教授の中林一樹さんはやはり「軟弱地盤」の危険性について語る。

「表面の土地の状況によって、地上の揺れ方は変わります。荒川区、墨田区、江戸川区のような泥と砂が堆積した沖積地盤は地上が揺れやすく、液状化も起きやすい。一方、武蔵野台地のように固い地盤の上に火山灰が積もった地盤は、沖積地盤と比べると揺れにくいのです」

丘陵の谷の部分を埋め立てた土地も当然ながら地盤が柔らかく、揺れやすい。液状化が建物の全壊に直結することはきわめて少ないが、ライフラインには大打撃を与える。

都内で地震の被害をもっとも受けるのは、環状七号線の内外の市街地です。この地域は、100年前の関東大震災後にできた市街地で、充分な都市計画がされず、道路が整備されないまま住宅が立ち並んだために、建て替えがなかなか行われない。築40年以上の旧耐震基準の家がいまだ密集して残っています」(中林さん・以下同)

墨田区や荒川区、葛飾区など荒川両岸や大田区の多摩川河口などの低地には、地盤が揺れやすいうえに木造住宅が密集した市街地が多く、被害も集中する。足立区の千住、台東区は浅草の北部なども同様で、危険度が高いとされている。

荒川、足立、墨田、葛飾、台東の危険地域

たとえ地盤がよくても、安心してはいけない。

「練馬区や中野区、杉並区、世田谷区あたりは地盤こそいいですが、木造住宅の密集度が高い。山の手の中では被害を受けやすい場所だと言えます」

つまり、地震が起きたとき大きな被害が出る地域がドーナツ状に都心を取り囲んでいるのが、現在の東京の都市構造なのだ。そのため、もし都心のオフィスで勤務中に地震が起きた場合、帰宅しようと試みてはならないと、中林さんは言う。

「東京都も大規模災害発生時にはむやみに移動しないようアナウンスしています。東日本大震災のときは建物被害はなかったのに電車やバスが止まり、都心から郊外へ歩いて帰る人が大勢いましたが、首都直下地震が起きた場合、建物倒壊と火災で危険な木造密集市街地を通り抜けて帰ることになります」

そのエリアを歩いて帰ることは、帰宅者自身が危険にさらされることにつながるだけでなく、消防活動や救助活動の妨げにもなりうる。

「ひとたび地震が起きれば救出・救助活動や消火活動が最優先です。幹線道路は歩行者を含めすべて通行止めにし、それらの活動に集中しなければなりません。道路をゾロゾロと歩いて帰ろうとする行為は、救助・消火活動の邪魔をすることにほかならない。もちろん、帰宅者も裏路地に入ったら、いつ火に囲まれるかわかりません。火災が収まるまでは、都心にとどまった方が安全なのは間違いありません」

危険なのはもちろん都心ばかりではない。武蔵野学院大学特任教授で地震学者の島村英紀さんが指摘する。

「江戸川区、葛飾区、江東区、足立区、荒川区、北区、練馬区、杉並区、世田谷区、大田区などは住宅密集地のためリスクが高い。また、新宿区も駅の西側の住宅が密集しているところや、文京区でも古い住宅の多い地域は危険度が高い。

最新版 首都直下地震危険地域ワースト10

23区の西側と多摩地区の大部分が含まれ地盤が安定している武蔵野台地でも、台地の端は地滑りが起きる可能性が否定できません。造成されているように見えても雨水で緩む可能性もあります。日本に住んでいる以上、被害想定のリスクが低い地域にいても、絶対に安全というわけではないのです」

2019年に台風19号によって武蔵小杉や二子玉川が浸水・冠水し、新しいタワーマンションに甚大な被害が出たのは記憶に新しい。たとえ地盤がよく住宅が密集していない地域で、新築の家に住んでいても、安全というわけではないのだ。

「杉並区に向かう善福寺川、豊島区の神田川、石神井川などの周辺は土地が低い。川によって運ばれてきた堆積物により地盤が緩くなっていたり、埋め立てられていれば液状化のリスクも高くなる。農業用ため池を埋め立てた土地が崩落したこともあります」(島村さん・以下同)

新興住宅街と呼ばれるエリアでも、安心はできない。都営団地のような建物のほか、光が丘や緑が丘などは、飛行場跡地や工場跡地に団地をつくり、イメージを変えるために地名を変更して販売しており、こうしたケースでは基礎工事が甘いことが考えられるという。

「これらの場所は建築基準法の耐震基準が見直された1981年より前につくられた古いアパートや民家が多く、阪神・淡路大震災のような火災を招く危険が決して低くありません。池袋も駅周辺は開発されていますが、少し西に行くと、同様の住宅密集地。道路幅も昔ながらの4〜5mと狭く、簡単に飛び火します」

※女性セブン2023年3月16日号