広がる“高齢者ヘイト”原因は「失政を責任転嫁する政府にある」と専門家

広がる“高齢者ヘイト”原因は「失政を責任転嫁する政府にある」 政治・経済

広がる“高齢者ヘイト”原因は「失政を責任転嫁する政府にある」と専門家(『女性自身』編集部 投稿日:2023/03/02 06:00 最終更新日:2023/03/02 06:00)

「高齢者は、老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」(2021年12月「ABEMA Prime」)

こんな過激な持論を繰り返してきたのは、コメンテーターとしてもすっかりおなじみになった経済学者でイェール大学のアシスタント・プロフェッサーの成田悠輔氏(38)だ。今、こうした成田氏の発言が国内外で注目され、批判を浴びているのだ。

2022年1月にネットで公開された堀江貴文氏らとの座談会では、前述の主張だけではなく、“強制的な安楽死”の必要性にまで言及している。

「優生思想ですね。衆議院議員の杉田水脈さんも『LGBTは生産性がない』と言って批判された。つまり、“生産性”がないから、高齢者や障がい者に価値がないと勝手に決めつける。ナチスと同じ発想です」

そう指摘するのは、社会保障法などを専門としている鹿児島大学の伊藤周平教授だ。ナチスはユダヤ人をはじめとする特定の民族の虐殺だけではなく、精神障害や身体障害のある人々を“強制的な安楽死”させたことでも知られている。

成田氏の主張に厳しい批判が集まる一方で、近年、高齢者を敵視する同様の意見が、若年層の間で広がっているのだ。

《老害たちの社会保障費に、若者の金がとられている。自分勝手な老人が日本をダメにしている》
《寝たきりの老人を延命させるために、若者が犠牲になっている。コロナで死ぬのは寿命だろ》

いずれもネット上で、よく見られる主張だ。

“政府公認”の高齢者たたき

「深刻な不況のなか、特定の悪者を作ってバッシングすることで、自分たちの責任を転嫁するというのは古くから権力者がやってきた手法です。日本では今、高齢者が敵にされている」

そう指摘するのは経済評論家の森永卓郎さんだ。

「財務省や与党の政治家は、高齢者からの税収は少ないのに、年金や医療などの莫大な社会保障費がかかっているから、財政健全化ができないと言い続けてきました。そのために、増税も必要だし、少子化対策もできないと。そうやって、世代間の対立をあおり、責任転嫁してきた。その一方で、防衛費は大幅に増やすわけです」

成田氏ほど“あからさま”でないものの、こうした高齢者蔑視発言は、与党自民党からも、たびたび発せられてきた。

その急先鋒が、麻生太郎元首相だ。総理大臣時代の2008年、「(同窓会で再会した友人たちが)よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる」と発言。2016年にも、テレビで見た高齢者を例に、「『いつまで生きているつもりだよ』と思った」などと言い放った。

また、自民党の若手のホープ・小泉進次郎元環境大臣も、「(子どもに比べて)あまりにも高齢者を優遇しすぎ」「高齢者に配るお金はあるが、少子化対策のお金はないというのはおかしい」と、雑誌の座談会で発言している。

テレビや新聞では、元官僚や政権に近い言論人が同様の意見を展開。成田氏の発言は、こうした土壌のもとされたものだった。

「高齢者はコロナで死んでも構わない」

一方、岸田首相はどうだろうか。高齢者を含む“全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会を目指す”と所信表明演説で語ってはいたが……。

「大手メディアはあまり報じませんが、新型コロナの第8波だけで東日本大震災の死者数を超える2万人超が亡くなっています。その約9割が70代以上の高齢者です。にもかかわらず、岸田政権はなんの対策もとらず、逆に5類への引き下げを決定しました。つまり、実際に政府は、『高齢者は死んでも構わない』という政策を実行しているんです」(森永さん)

さらに、政府が進めるのは医療費の削減だ。前出の伊藤さんはこう解説をする。

「厚労省はこれまで、人口減少と高齢化を見越して全国で公立・公的病院の統廃合を進め病床を削減してきました。コロナ禍で病床がひっ迫している中でも進めていた。多くの高齢者が入院できずに亡くなったのは、その影響も大きいでしょう」

一方で、高齢者の負担はうなぎのぼりだ。昨年10月から、年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担が2割に。65歳以上が負担する介護保険料も導入当初から2倍超の月額平均約6千円になっている。さらに2024年度からは、介護保険サービスの利用料の自己負担額が引き上げられる可能性が高い。

「安倍政権と違って、岸田首相は財務省の言うことは何でも聞く政権なんです。高齢者の切り捨ては、岸田政権で間違いなく加速していくでしょうね」(森永さん)

日本は高齢者も若者もみな貧しい

「そもそも“恵まれた高齢者VS貧困な若者”という図式がまちがっている」と伊藤さんは指摘する。

「日本は世界的に見ても、高齢者の貧困率が高い。貯蓄も年金も少ないためです。裕福な高齢者は一握り。実は高齢者も若者も貧困状態にあるのです」

OECDの最新のデータによると、高齢者の貧困率はG7の中ではアメリカに次いで2番目に悪い水準。18~65歳も、イタリア、アメリカに続き3番目に悪い。

「日本は高齢者人口が多いので社会保障費の全体は多いのですが、1人あたりでみると、先進国のなかでは少ない水準です。そもそも、社会保障にあてると言って上げた消費税の大部分は国の借金の返済と、実質的に法人税引き下げの穴埋めに使われている。誤った世代間対立に乗せられていないでしょうか?」

最後に森永氏はこう指摘する。

「結局、高齢者を悪者にしているのは、30年間日本だけ成長できず、賃金を上げられず、少子化の対策もできなかった政府の責任をごまかすためです」

誰もが年をとり、いずれ高齢者になる。若者よ、本当の敵は未来の自分自身ではない。

出典元:「女性自身」2023年3月14日号