脳の健康を促進し、記憶力を向上させる5つのエクササイズ たった10分間、これらの運動をするだけで認知力向上に役立つ

脳の健康を促進し、記憶力を向上させる5つのエクササイズ 科学・技術

脳の健康を促進し、記憶力を向上させる5つのエクササイズ たった10分間、これらの運動をするだけで認知力向上に役立つ(BAZAAR 2023/01/30)

By Korin Miller

記憶力と脳の健康にプラスの影響をもたらす運動が研究からわかった。
激しい運動が記憶力や計画力、統合力を向上させる。
1日10分やるだけで大きな効果があるとデータでは示唆。

運動が体にいいことは昔から知られているが、運動が精神に与える影響については引き続き研究が進められてきた。そんな中、新たな研究により、脳の健康に最適な運動が明らかになった。この運動は記憶力から整理整頓する能力まで、あらゆるものを研ぎ澄ますのに役立つ。

専門誌『Journal of Epidemiology & Community Health』に掲載された研究によると、イギリス在住の約4500人に1日24時間、1週間にわたって太ももに活動量を測るモニターを装着してもらい、データを追跡。研究者たちは、彼らの活動レベルが、短期記憶、問題解決能力、物事の処理能力にどのような影響を及ぼしたかを分析した。

その結果、たとえ10分以内であっても中程度の運動や激しい活動をしている人は、座っている時間が長い人、寝ている時間が長い人、穏やかな活動をしている人に比べて、認知力の得点が非常に高くなることがわかった。(激しい運動には、ランニング、水泳、傾斜地でのサイクリング、ダンスなどが含まれ、適度な運動には早歩きや心拍数が早くなる運動が含まれる)。

特に、これらの運動をしている人は記憶力が優れており、計画立案や整理などの実行プロセスに最大の効果があるということがわかった。

それとは対照的に、ほとんど寝ていたり座っている時間が長い人、少ししか動かない人は、認知力が1~2%低かった。

研究者たちは、「適度で活発な運動時間を確保する、あるいは身体活動を維持するよう努力が必要である」と結論づけている。

しかし、この研究は完璧なものではな。以前に集めたデータを用いているので、研究者は参加者の健康状態や長期的な認知機能など、広範囲にわたる詳細はわかっていなかった。だからこの研究結果からわかったことは、「単に、よく運動する人は平均して認知力が高い傾向があるということかもしれません」と、研究論文の主筆者で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのスポーツ・運動・健康研究所の博士課程に在籍するジョン・ミッチェル氏は言う。

しかし、彼はこの発見は、「日常生活に最小限の変化を加えただけで、認知力に影響をもたらす可能性があることを示唆している」とも付け加えている。

では、なぜ、運動と良い記憶力の間に関連性があるのか?ここで知っておくべきことをまとめた。

なぜ運動は記憶力や思考を研ぎ澄ますのか?

運動と認知機能強化の関連性を見出した研究は、これが初めてではない。実際、米国疾病管理予防センター(CDC)は、運動は認知力向上に役立ち、記憶力や感情のバランス、問題解決能力を高めると、オンライン上で明確に述べている。

また、定期的に運動することは認知機能の低下や認知症のリスクを下げることにも役立つ。2020年に予防医学の専門誌『Preventative Medicine』で発表された、12万8925人を対象に科学的分析した研究によると、運動不足の成人は運動量の多い成人と比較すると、約2倍、認知力が衰える可能性が高いことがわかった。

しかし、その背景にある「理由」は「完全には明らかになっていない」と、カリフォルニア州サンタモニカにあるパシフィック・ニューロサイエンス・インスティチュート、フィットブレイン・プログラムのディレクターで脳健康の上席コーチ、ライアン・グラットは言う。とは言え、これまでの研究からグラット氏は、「活動レベルの違いが脳の血流や認知力に影響を与える可能性がある」ことも示唆する。つまり、より激しい運動をすることで脳への血流を刺激し、その過程で思考力を高める可能性があるということだ。

骨格筋(骨をつなぐ筋肉)は、運動によって活性化され、脳とコミュニケーションをとり、ニューロン(情報伝達物質として働く細胞)の健康や機能に影響を与えるホルモンを放出すると考えられている、とラトガース・ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学の運動生理学と健康学部准教授スティーブン・K・マリン博士は述べている。「それが記憶力や認知力を助ける脳細胞の成長と再生を促進する可能性があるのです」と彼は言います。

現在、CDCは、ほとんどの成人が中程度の強度の運動を週に少なくとも150分行うことを推奨している。

記憶力向上にベストな運動

CDCは一般的に、次のような運動を日常生活に取り入れて脳の健康を促進するよう、推奨している。

ダンス
TVを観ながらスクワットや足踏みをする
ウォーキングをルーティーンにする
階段を使う
犬をかっている人は犬と散歩する(犬を飼っている人は、飼っていない人と比べて1日平均22分多く歩くという研究がある)

とは言え、最新の研究では、もっと激しい運動の方が脳には最適だと示唆している。だが、「活動モニターをつけた人がどのような運動をしているのかわからない」ので、どの運動がベストだとは正確には言えないとグラットは指摘している。一つ言えることは、心拍数を上げることが鍵だ。

それには以下のような運動があげられる。

高強度インターバルトレーニング(HIIT)
ランニング
ジョギング
水泳
自転車漕ぎ
ダンス

「1日中座っているだけの生活に、体を動かすという“ブレイク”をとりましょう」とマリン博士はアドバイスする。

例えば、約5〜6分ただ椅子に座っているだけの代わりに、1〜2分間、ジャンピングジャック(足を開いてジャンプして手を頭上であわせ、足を閉じてジャンプして手を体の脇に戻す)をしたり、階段を素早く登ったり、エアスクワットや腕立て伏せをしてみる。「もしくは、10分くらい歩いてみるのも大いに効果がありますよ」

さっそく試して、記憶力向上に努めよう。

Translation: Mitsuko Kanno From Prevention

KORIN MILLER
Korin Miller is a freelance writer specializing in general wellness, sexual health and relationships, and lifestyle trends, with work appearing in Men’s Health, Women’s Health, Self, Glamour, and more.