ヤバいのは防衛増税だけじゃない! 岸田政権が強行する「ステルス改憲」で“戦争ができる国づくり”

岸田政権が強行のヤバすぎる「ステルス改憲」の罠! 政治・経済

ヤバいのは防衛増税だけじゃない!岸田政権が強行する「ステルス改憲」で“戦争ができる国づくり”(週刊女性PRIME 2023年1月18日(水) 8:01配信)

物価高が止まらない。調査会社『みずほリサーチ&テクノロジーズ』のリポートによると、2022年度の家計支出は前年比で年間9万6000円の増加。今年はさらに4万円も増える見込みだ。それに加えて上がらない賃金、減る一方の年金……。庶民の暮らしは厳しさが増すばかりで、安心・安全にはほど遠い。

防衛費の増額は「増税」で負担

そうした中、岸田政権は昨年12月16日、外交・防衛政策の基本方針が記された3つの文書「安全保障関連3文書」(以下、安保3文書)を改定し、閣議決定した。

安保3文書には’23年度から5年間の防衛費について、現行計画の1.5倍に当たる約43兆円に増額する内容が盛り込まれている。しかも5年目に当たる’27年度には4兆円が不足するため、このうち1兆円を増税でまかなうと表明している。

これが「防衛増税」として批判を集めたのは周知のとおり。岸田文雄首相は「未来の世代に対する私たち世代の責任」と理解を求めるが、世論の反発は大きい。名古屋学院大学の飯島滋明教授(憲法学・平和学)も、こう批判する。

「生活困窮者が増え、非正規雇用の多い女性の自殺も問題になっています。こうした社会保障には“財源をどうするのか”という話になるのに、防衛費には“予算を増やして税金を充てます”と言い出す。国民の理解を得られるわけがありません。

そのうえ岸田政権は’27年度から、従来はGDP(国民総生産)比1%程度だった防衛費を同2%に増やす方針です。日本はアメリカ、中国に次いで、世界3位の軍事大国となってしまいます」

「防衛力」を超え「戦力」に拡充

問題はそれだけではない。安保3文書では、「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有を明記している。日本が攻撃を受けていなくても、相手国が攻撃に着手したと判断できれば、日本から相手国に向けてミサイルを撃ち込むことを可能にするものだ。

「2015年に成立した安保法制では、“集団的自衛権の行使容認”と言って、日本と密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、日本が直接攻撃を受けていなくても自衛隊は武力行使ができると認められました。

ただし憲法9条は、外国を攻撃する戦力を持つことを禁じています。そのため歴代の政府は、外国領域を攻撃できる兵器を持たない方針をとってきました。

ところが岸田政権はその方針を変えて、外国を攻撃できる兵器を持てるよう安保3文書の中に明記したのです」(飯島教授、以下同)

これは「戦力」の保持を禁止した憲法9条に違反している。また、自衛のための必要最小限度の実力行使しか許されないという「専守防衛」からも逸脱する。

憲法違反してまで増強するのに、軍事的には「周回遅れ」

「安保法制の際、安倍政権は歴代政府の憲法解釈を独断で変えて、集団的自衛権の行使を閣議決定で容認しました。それと同じ問題が安保3文書でも繰り返されています。

外国を攻撃できる武器は憲法で禁じられた“戦力”です。それを持ちたければ、憲法改正の手続きを行い、主権者である国民の判断を仰ぐため国民投票を実施すべき。時の政権が独断で国のあり方を変えることは、憲法が定める国民主権からも許されません」

一方、敵基地攻撃能力を軍事的に見て「周回遅れ」と指摘するのは、軍事ジャーナリストの前田哲男さんだ。

「日本には“相手国が攻撃に着手した”と判断する手段がありません。中国や北朝鮮との間にホットラインを敷いていないため、アメリカの情報に頼らざるをえない。

加えて、日本が’25年の配備に向けて開発を進めているのは巡航ミサイルです。100キロ以上を飛ぶには、1時間はかかります。一方、日本に飛んでくるのは北朝鮮も含めて弾道ミサイル、つまりロケットなんです。最長10分で日本列島のどこにでも命中させる能力を持っています。これでは抑止力になりません」(前田さん、以下同)

「中国脅威論」はどこまで真実か?

そもそもなぜ今、軍備増強に走る必要があるのだろうか。岸田政権は「厳しく複雑な安全保障環境」を理由に挙げるが、説明不足は否めない。

「ウクライナ戦争がきっかけになったことは間違いない。以来、ロシアがウクライナに侵攻したように、中国が台湾海峡に攻め込むのではないかという“台湾海峡危機”が喧伝され、自民党内で大々的に言われるようになりました」

現に、ウクライナ戦争の勃発直後の昨年2月、安倍晋三元首相は「台湾海峡危機は日米同盟の危機であり、日本有事である」と強調していた。

「こうした考えは安保3文書にも色濃く表れています。中国脅威論という立場に立ち、中国に対抗するために防衛費を増やし、抑止力を高めるという発想です

ウクライナのように、中国が台湾に、そして日本に侵攻するのか

実際にどの程度、差し迫った危機にあるのだろうか。

「アメリカの調査会社『ユーラシア・グループ』は’22年に続き、今年も台湾有事を“リスクもどき”に分類しました。将来的に事情が変わればともかく、現状で中国が台湾を武力で侵略する可能性は極めて低いと分析しています」

と、前出・飯島教授。前田さんもこう続ける。

「起こりえないと思います。台湾のような島を武力制圧するのは、軍事作戦的に極めて難しいからです。それよりも中国の傾向から見て、ジワジワと圧力を加えながら、時間をかけて民心を掌握していく方法をとるでしょう」

日本と連動するかのように、アメリカも中国への警戒心を高めている。

「とりわけバイデン政権になってからは、その傾向が顕著です。昨年11月に発表された日米共同声明には“岸田総理は日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領はこれを強く支持した”とあります。対中国を念頭に、アメリカから日本へ圧力を強めている様子が読み取れます。

日本列島は中国を取り囲むように連なり、日米安保条約に基づく米軍基地も点在しています。アメリカとしては、日本を盾にすると中国に軍事的な威圧感を与えるのに都合がいい、と考えているのでしょう」(前田さん、以下同)

日米の軍事的な協力がますます強化されている

日米が軍事的に一体化する動きは近年、強化されてきた。

「現在、沖縄に駐留している陸上自衛隊の第15旅団を、より規模の大きな師団に改変する計画があります。2000人ほど増員することになるため、新たな駐屯地を作らなければなりませんが、今でさえ基地被害が深刻な沖縄では実現不可能。

となると、米軍基地の中に自衛隊が入り、共同使用することになる。まさに日米が軍事的に一体化するわけです。地元との軋轢がさらに深まるのは必至でしょう」

安保3文書を受けてアジア周辺では緊張が高まっている。飯島教授は懸念を隠さない。

「中国、ロシア、北朝鮮は安保3文書を批判し、対抗措置をとると明言したり、軍事訓練を強化させたりしています。今の中国や北朝鮮の行動にも問題はありますが、それは外交で対応すべきこと。軍事力で対抗すれば、かえって脅威が煽られ、東アジアの軍事的緊張を高めかねません」

平和国家を謳う日本はどこへ向かうのか。その行方は、私たちの今後の選択にかかっている。