消費者契約法改正、与党に先行論 「霊感商法」取り消し権拡大、悪質寄付規制法は野党と溝

消費者契約法のリーフレット 政治・経済

消費者契約法改正、与党に先行論 「霊感商法」取り消し権拡大―悪質寄付規制法は野党と溝(JIJI.COM 2022年11月01日11時04分)

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受けた被害者救済の法整備を巡り、与党内で「霊感商法」への対応を強化する消費者契約法(消契法)改正を先行させる案が浮上した。一方、悪質な寄付要求の規制では新法制定を検討するが、立憲民主党や日本維新の会との協議が難航。来年の通常国会への先送りも視野に入れる。

旧統一教会・被害者救済法案の論点

消契法では、不安をあおり高額なつぼや印鑑などを買わせる霊感商法の契約を取り消せる。ただ、要件が厳しく、消費者庁によれば、これまで取り消し権が使われた裁判例は見当たらない。

政府・与党は、①要件の緩和、②行使期間の延長(現在は契約締結から5年)、③消費者が合理的に判断できない事情を不当に利用した「つけ込み型」勧誘の対象追加―を柱とした法改正を目指す。野党の理解もおおむね得ており、今国会への法案提出、成立は可能とみる。

一方、悪質な寄付の要求を巡っては、「マインドコントロール」の定義付け、献金上限の設定、刑事罰導入に関して与野党の溝が埋まらない。

立民と維新が共同提出済みの救済法案は、マインドコントロールを「心理学に関する知識・技術の乱用や、人の知慮浅薄・心神耗弱に乗じて心身に重大な影響を及ぼす行為」などと定義。立民の長妻昭政調会長は10月30日の民放番組で「問題の核心はマインドコントロールをかけられた方々の被害をどうするかだ」と述べ、譲らない考えを示した。

これに対し、与野党協議で自民党の責任者を務める若宮健嗣氏は「どう定義付けるかは非常に難しい」と慎重姿勢を崩さない。与党は「社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為」による寄付を禁じる法整備を検討中。11月1日の次回協議会で、これに「いわゆるマインドコントロール下」の勧誘も含まれることを明確にすることで野党の理解を得たい考えだが、合意に達するか不透明だ。

寄付上限について、立民・維新案は「年間の可処分所得の4分の1超」を目安とした。しかし、与党には「教団側に所得を把握される」「寄付文化の萎縮につながる」との声もあり、規制に否定的だ。

刑事罰に関しても、規定するのに後ろ向きな与党と積極的な野党が対立する。公明党は創価学会を支持母体とする事情から、規制全般に慎重とみられている。

寄付規制新法を政府提出とする場合、内閣法制局の事前チェックなどに時間を要する。こうしたこともあり、自民党側からは「先に消契法を改正する方が早い」(閣僚経験者)との声が漏れる。公明党の高木陽介政調会長も「スピード感を持ってやっていく」との考えを示している。