英・トラス首相が辞任表明、28日までに新党首を選出 後継は誰か、候補になりそうな6人 ジョンソン前首相の再登板か

英・トラス首相が辞意表明 国際

英保守党、28日までに新党首選出 トラス首相辞任表明で

英保守党、28日までに新党首選出 トラス首相辞任表明で(毎日新聞 2022/10/21 09:01 最終更新 10/21 09:01)

英国のトラス首相は20日、辞任を表明した。9月に発表した大型減税策が財政悪化への懸念から市場の混乱を招き、責任を取る形で退陣に追い込まれた。これを受け、与党・保守党内で党首選を管理する委員会は20日、来週に党首選を実施し、28日までに新党首を選出すると発表した。

英国では現在、保守党が下院の過半数を占めており、トラス氏の後任の新党首が次期首相となる。トラス氏はそれまで職務にとどまる。

トラス氏は20日、「現状では保守党から選出された職務を果たすことはできない」と辞任の理由を説明した。英メディアによると、党首選にはスナク元財務相やモーダント前国防相、ジョンソン前首相らの立候補が取り沙汰されている。

一方、最大野党・労働党のスターマー党首は20日、「英国はもう保守党の新指導者を試すことはできない」と述べ、解散総選挙を要求した。だが保守党は現在、世論調査で労働党に大幅なリードを許しており、総選挙に打って出ても惨敗する可能性が高いことから、あくまで党首交代で乗り切る構えだ。

トラス英首相、異例の短命政権に…めぼしい成果なし、主要閣僚離脱し支持率は最低7%

トラス英首相、異例の短命政権に…めぼしい成果なし、主要閣僚離脱し支持率は最低7%(読売新聞 2022/10/21 07:39)より抜粋

トラス氏は19日の下院討論で「私はファイターだ。簡単に諦めない」と辞任をきっぱりと否定していた。先月発表した大型減税策を約3週間で事実上白紙化したことについては自らの責任を認め、改めて謝罪した。

トラス氏としては一連の混乱にこれで区切りをつけ、反転攻勢に出る構えだった。しかし、誤算はその日の夕方、スエラ・ブレイバーマン内相が減税策撤回に抗議して辞任したことだった。今月14日の財務相解任に続く2人目の主要閣僚の離脱に衝撃が広がった。

2025年1月までには次期総選挙が行われる予定で、ドタバタ劇がやまないトラス政権に対し、党内からは辞任圧力がさらに強まった。市場に否定されたのに続き、閣内の「身内」からも国民からも見放され、トラス氏が政権を維持する「政治的体力」はもはや残されていなかった。一夜明けた20日昼、トラス氏は党幹部らと協議して辞任を決断した。

光熱費高騰が国民を直撃し、ロシアのウクライナ侵略が続く中で就任したトラス氏について、かつて英国を立て直したマーガレット・サッチャー元首相と重ねる声が国内にはあったが、めぼしい成果は何一つ出せなかった。

英調査会社ユーガブの世論調査では、トラス政権の支持率は7%に沈み、過去10年の最低記録を更新した。10年5月から続く保守党政権では、デビッド・キャメロン氏は首相を約6年務めたものの、後任のテリーザ・メイ氏、ボリス・ジョンソン氏はそれぞれ約3年で職を辞し、トラス氏の任期は異例の短さで終わった。首相が次々と入れ替わる事態は、国民の保守党離れに拍車をかけており、トラス氏の後任は一層厳しい政権運営を迫られそうだ。

米・バイデン大統領、仏・マクロン大統領、日本政府関係者のコメント

英 トラス首相 与党党首辞任を表明 経済政策めぐり求心力低下(NHK 2022年10月21日 4時30分)より抜粋

アメリカ バイデン大統領「強固な同盟関係 変わることはない」

アメリカのバイデン大統領は20日、声明を発表し「アメリカとイギリスは強固な同盟関係と永続的な友好関係にあり、その事実は変わることはない」としています。

さらに、トラス首相に対して、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの対応を巡って共に取り組んだことについて謝意を示し、「両国が直面する地球規模の課題に取り組むために引き続きイギリス政府と緊密に連携していく」としています。

フランス マクロン大統領「イギリスの安定を願っている」

フランスのマクロン大統領は記者団に対し「同僚が去っていくのを見るのは悲しい。フランスは、イギリス国民の友人として、何よりもイギリスの安定を願っている」と述べ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻やエネルギー危機といった国際社会の喫緊の課題に対応するためにも安定したイギリスと協力していく必要があるという考えを示しました。

日本 政府関係者「日本に好意的だったので残念」

政府関係者の1人は「イギリスの内閣の不支持率が高くなっていたので早晩、倒れる可能性はあると考えていたが、トラス首相は日本に好意的だったので残念だ。普遍的な価値観を共有するパートナーとして、関係強化を目指していくことに変わりはない」と話しています。

別の政府関係者は「日本にとってはあまりよくなく、間接的にいろいろ影響を受けるだろう。イギリスとは『自由で開かれたインド太平洋』の考え方が一致していたし、対ロシアや対中国の政策など、外交や安全保障では日本と同じ軸に立つ国なので、首相の交代で基本方針が変わると困る」と話しています。

トラス英首相の後継は誰か 臆測渦巻く、候補になりそうな6人

トラス英首相の後継は誰か-臆測渦巻く、候補になりそうな6人(Bloomberg 2022年10月21日 3:51 JST)

トラス氏は20日、辞任を表明した記者会見で、保守党は1週間以内の次期党首選出を目指しており、後任が決まるまで首相職にとどまると述べた。現職の閣僚では早くも、ハント財務相が不出馬の意向を示した。

保守党からは過去7年足らずで5人目の首相となる後任は、支持率で主要野党・労働党に30ポイント以上の大差を付けられた保守党の再建という重責を託されることになる。可能性のある人材として、以下の名前が挙がっている。

有力候補

スナク元財務相:

今夏の保守党党首選でトラス氏とともに上位2人に残ったスナク氏は、トラス氏の計画は市場の混乱を引き起こすと正しく予測し、経済政策に関する自身の信頼を高めた。

ただ、ジョンソン前首相辞任の引き金を引いた存在と多くに見なされていることが、引き続き同氏への支持拡大を阻んでいる。

一般市民が高インフレ下のやりくりに苦労する中で、莫大な個人資産を持っていることもマイナスに働いている。

モーダント下院院内総務:

今夏の党首選で3位だったモーダント氏は、保守党の一般党員に人気がある。通商政策担当相や国防相を歴任した。18日の議会では野党の追及を手際よくさばき、存在をアピールした。経済でも信頼できることを党内に示す必要はあるだろう。

ジョンソン前首相:

前首相の返り咲きがあるのだろうか。英国で首相経験者が再登板した例は、1960年代から70年代にかけて首相を2回務めた労働党のハロルド・ウィルソン氏にさかのぼる必要がある。

だが、ジョンソン氏は常に政治的力学の法則に逆らってきた。数カ月前まで首相だったジョンソン氏には、依然として党所属議員と一般党員から一定の支持がある。

首相在任中の行動について近く調査が始まる見通しで、それが支持者の離反を招く恐れもある。

ダークホース

ウォレス国防相:

高水準の防衛支出が必要だと考える党の一角にアピールできる、安定感のある人材だとみられている。ただ、党首選への出馬を繰り返し否定し、国防相の職を続けたい意向を示している。

ブレーバーマン前内相:

規定違反で19日に内相を解任されたブレーバーマン氏は、首相就任の夢を捨てる用意はないかもしれず、出馬となれば党内右派に支持を呼び掛けそうだ。

解任は個人の電子メールから公的文書を送付したことが理由で、同氏は重大な件ではないと主張している。

バデノック国際貿易相:

今夏の党首選に出馬した1人で、再び出馬を考えるかもしれない。一般党員に人気で、党首選が一般党員の投票までもつれ込めば勝機が出てくる可能性もある。

ジョンソン前首相、保守党党首選に立候補か ⇒ 出馬見送り

ジョンソン前首相、保守党党首選に立候補か トラス氏辞任受け=報道(ロイター 2022年10月20日11:12 午後)

英国のボリス・ジョンソン前首相が、20日辞任を表明したトラス首相の後任として保守党の党首選に立候補する見通しと、英紙タイムズが報じた。

タイムズ紙の政治担当エディター、スティーブン・スウィンフォード氏はツイッターで、ジョンソン氏が「国益に関わる問題について、状況を探っていると言われている」と述べた。

その後、英紙デイリー・テレグラフは、ジョンソン氏が今週末の航空便で英国に帰国すると報じた。

英保守党首選 ジョンソン前首相は出馬見送り スナク氏優勢に
毎日新聞 2022/10/24 05:49 最終更新 10/24 16:51)

トラス英首相の後任を決める与党・保守党の党首選で、立候補が取り沙汰されていたジョンソン前首相は23日夜、一転して出馬の見送りを決めた。ロイター通信などが伝えた。党首選は23日に出馬表明したスナク元財務相が最有力とみられていたが、ジョンソン氏の不出馬により、スナク氏の新党首選出の可能性がさらに高まった。