令和2年度第3次補正予算が1月26日に衆議院を通過し、28日に参議院で審議され成立する見通しだ。昨年の秋に編成され、その後感染が急増したためGoTo事業の停止や緊急事態宣言の発出などの変化を踏まえていない。総額19兆1761億円の経済対策の内、コロナ対策は22.7%に過ぎず、GoToトラベル・イートなどポストコロナに向けた経済対策が60.9%、国土強靭化が16.4%を占めている。
令和2年度 第3次補正予算 昨年秋に編成され、緊急事態を反映していない
新型コロナウイルス対策などを盛り込んだ今年度の第3次補正予算案が1月26日夜、衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されて参議院に送られた。
27日から2日間、参議院予算委員会で質疑が行われ、28日に成立する見通し。
一般会計の追加歳出は21兆8353億円で、このうち追加経済対策は19兆1761億円。経済対策は次の3本柱からなる。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止策 … 4兆3581億円
・新型コロナウイルス感染症緊急包括⽀援交付⾦(病床や宿泊療養施設等の確保等)…1兆3011億円
・診療・検査医療機関をはじめとした医療機関等における感染拡⼤防⽌等の⽀援…1071億円
・新型コロナウイルスワクチンの接種体制の整備・接種の実施…5736億円
ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 … 11兆6766億円
・デジタル改⾰・グリーン社会の実現…2兆8256億円
・Go To トラベル…1兆311億円
・Go To イート …515億円
防災・減災、国土強靭化の推進など安全・安心の確保 … 3兆1414億円
・防災・減災、国⼟強靱化の推進(公共事業)…1兆6532億円
令和2年度補正予算(第3号)の概要
3次補正の編成に取りかかった昨年秋ごろは感染者が増えつつあったが、政府は、GoToトラベルを「エビデンス」がないとして頑なに継続していた。
12月下旬になってやっと事態の深刻さを認め、GoTo事業を停止し、年が明け1月になって、東京など11都府県に緊急事態宣言を発出した。
3次補正案はそのような事態の変化を踏まえておらず、コロナ禍の収束を前提にした施策が多くを占めている。崩壊の危機に晒されている医療や、緊急宣言に伴い営業時間の短縮を求められた飲食業界などの支援に集中した予算とすべきだ。組み替える必要がある。
補正予算でもう一つ指摘しておきたいことは、本来は補正でなく本予算に組み込むべきものを補正に組み込んでいることである。
政府は、当初予算で計画した収支の中で活動を行うのが原則である。しかし、集中豪雨や地震などの大災害が発生したり、当初の見込みより激しく景気が落ち込んだ場合には、当初予算を補う形で補正予算を編成し対処することになっている。先を見通せないコロナ対策に対しても補正予算を編成して臨機応変に対処する必要がある。
しかし、ポンチ絵(図表)にある、「Ⅱ.ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 116,766億円」はほぼすべて本予算に計上すべき内容であり、「Ⅲ.防災・減災、国⼟強靱化の推進など安全・安⼼の確保 31,414億円」も2020年度に発生した災害に対する復旧等事業費を除いて本予算に組み込むべき内容である。
内容を精査しないと断定できないが、2020年度に発生した災害に対する復旧等事業費は、「災害復旧等事業費〔6,057億円〕」及び「災害等廃棄物処理〔106億円〕」だと推測する。
立憲民主、共産両党は3次補正案に含まれる需要喚起策、GoToキャンペーン費など6兆914億円を撤回し、医療機関や生活困窮者への支援を強化するため、予備費を充てるなどして17兆9000億円を計上する組み替え動議を共同提出した。維新と国民民主党もそれぞれ独自の組み替え動議を出したが、いずれも否決された。
立憲民主党が提出した組み替え動議 「コロナ集中対策予算にすべき」
立憲民主党・無所属と共産党を代表して、立憲民主党の奥野総一郎議員が組み替え動議の趣旨説明を行った。
編成替えを求める理由について、
現在、変異株の流入など感染の収束が見通せないなか、持てる力の全てを感染拡大防止と医療体制への支援、個人・事業者支援等に注ぐべきだと考えるが、第3次補正予算案は昨年12月に編成されたものであり、そもそも現在の緊急事態宣言下における危機的な国民生活や事業、医療体制が想定されていない。
また、GoToトラベルやGoToイートなど完全にタイミングを誤った予算が含まれており、現下の危機的な状況において適したものではない。
さらに、政府案には本来であれば本予算で審議されるべき予算が含まれている。直近の豪雪対応を始め、災害復旧のための経費等は必要だが、災害復旧事業等を除く国土強靭化やカーボンニュートラルに向けた基金創設や大学ファンドなどは緊要性を欠き、本予算で審議すべきものだ。
と政府案の問題点を列挙し、
いま、国民が求めている補正予算は、現下の深刻な状況を克服するための「コロナ集中対策」予算だ。
政府案で計上されている予算のうち、急を要さない項目を撤回し、感染拡大防止と医療体制への支援、個人・事業者支援等に万全の対策を講ずるため、補正予算案を組み替えることが必要不可欠だ。
と述べた。その上で、コロナ集中対策予算として、
①医療機関・従事者等への支援に3兆円
②徹底した感染防止対策に1.5兆円
③生活困窮への支援に3.4兆円
④事業・雇用支援に7.5兆円
⑤地方自治体の支援に2.5兆円
計17.9兆円を計上し、その概要について説明した。財源については、2020年度予備費残額のうち4兆6644億円を充当、優先的に速やかに執行し、その上で補正に含むべきでない予算を撤回するとした。