岸田首相「倍増」を乱発 言葉だけが躍ってどうも中身が見えにくい

英ロンドンのギルドホールで講演する岸田首相=2022年5月5日 政治・経済

岸田総理、「倍増」を乱発

小社会 「倍増」の乱発(高知新聞 2023.02.27 08:00)

県議会を取材していた頃の知事には口癖、使う頻度が高い言葉があった。橋本大二郎さんなら「幅広い」。「はばひろい」ではなく「はばびろい」と発音したので、妙に耳に残っている。

例えば、県の闇融資事件からどう出直すか。その所信でも「県民が私に負託したのは幅広い意味での県政改革だった」。既成政党や既得権益を敵に見立て、草の根の支持を集めた政治スタイル。意識して多用した言葉だったかもしれない。

尾﨑正直さんは「他方」。持論を主張した上で異論にも目を配る。負けず嫌いで完璧主義。言われなくても多面的に考えていますよ、と先回りして批判を封じる話法とも映った。これも政治家の特徴を感じた言葉だろうか。

使う頻度といえば、岸田文雄首相の「倍増」もかなり高い。言うまでもなく、自らが率いる宏池会の創始者、池田勇人元首相への敬意があるのだろう。ただ、岸田首相の場合は言葉だけが躍って、どうも中身が見えにくい。

いまの国会では、首相が掲げる子ども予算の倍増を巡って論争が起きている。何を基準にした倍増か。混乱の末に、官房副長官は「出生率がV字回復すれば実現される」。ならば、子どもが増えるまで予算は増えないのか。自民党内からさえ、「え?」の声が出たのも無理はない。

「倍増」を乱発するのなら、しっかりと説明を伴ってほしい。「幅広い」「他方」と違って口癖の類いではないのだから。

「所得倍増」をめぐる岸田首相の主な発言

「出生率上がれば予算倍増」子ども予算めぐる木原副長官発言が波紋 与党内から反発も

「出生率上がれば予算倍増」子ども予算めぐる木原副長官発言が波紋 与党内から反発も…松野官房長官は擁護(TBSテレビ 2023年2月24日(金) 16:34)

子ども政策の予算倍増をめぐり、岸田総理“最側近”の発言に波紋が広がっています。木原官房副長官が「出生率が上がってくれば倍増が実現される」などと発言し、与党内からも反発の声があがっています。

木原誠二官房副長官 今月21日・民放BS番組にて
「子ども予算というのは、子どもが増えればそれに応じて予算は増えていく。出生率が上がってくれば倍増が実現される」

岸田総理が掲げている子ども予算の倍増をめぐり、木原官房副長官は、21日に出演した民放のBS番組でこのように発言しました。予算の倍増ありきではなく、子どもの数が増えた結果として倍増が実現するとの考えを示したものですが、これには与党内からも…。

自民・三原じゅん子参院議員 自身のTwitterにて
「え?『予算倍増』ってそういう意味で使ってたの?」

与党幹部
「どういう施策を打つかという議論をしているのに、元も子もないよね」

松野博一官房長官
「まずは何が有効で何をやるべきかという政策の中身を整理したいと述べた上で、いつ予算の倍増がされるかについては、いま決まっているものではない旨を述べたものと」

24日、松野官房長官は「発言全体として政府の説明と齟齬があるとは考えていない」として、木原氏の発言を擁護しました。
 
複数の政権幹部も「政府が期限を切って予算倍増と言ったことはない。発言は正しい」などとしていて、今後、波紋を広げそうです。