防衛装備庁に新研究機関、先端の民生技術を活用へ…AIや無人機など重点支援

新技術短期実証事業の概要 政治・経済

防衛装備庁に新研究機関、先端の民生技術を活用へ…AIや無人機など重点支援(読売新聞 2022/10/19 05:00)

政府は、先端の民生技術を防衛分野で活用するため、2024年度にも防衛装備庁に研究機関を新設する方針を固めた。AI(人工知能)や無人機など、今後の戦い方を左右する技術研究を発掘し、財政支援する。軍事と民生双方で活用できる先端技術の「デュアルユース(両用)」の研究を装備品開発につなげる狙いだ。

複数の政府関係者が明らかにした。デュアルユースの積極活用は世界の潮流だが、日本では学術界に安全保障分野への忌避感が根強く、米国や中国などと比べ、官民の研究協力は進んでいない。出遅れを挽回するため、国主導で後押しする専門機関が必要と判断した。

モデルとするのは、米国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)や同省の国防イノベーションユニット(DIU)だ。DARPAは、民間で投資を集めづらいリスクの高い研究への支援を手がけ、インターネットや全地球測位システム(GPS)などを誕生させた。DIUは、同省と企業の橋渡し役を担い、サイバーや無人機などに用いる民生技術の発掘に寄与してきた。

防衛装備庁の新研究機関の運用イメージ

新研究機関は、大手から新興まで広範な企業や研究機関、大学などを対象に中長期的な研究費の支援を行う方向だ。公募のほか、研究機関側から支援を打診することも想定する。将来的には、年1兆円規模の支援を目指す。

装備庁には、民間研究に助成する「安全保障技術研究推進制度」があるが、予算は年100億円程度だ。期間も2、3年に限定されることが多く、目立った成果は上がっていない。新研究機関では、さらに長期間にわたる支援を想定している。

重点的な支援対象とするのがAIや無人機関連に加え、量子技術、電磁波などだ。いずれも将来の戦い方を変える「ゲームチェンジャー」になり得る分野で、米中が激しく優位性を争っている。日本も、技術開発に注力し、日米同盟の抑止力強化につなげたい意向だ。

具体的な支援では、装備庁の技官が新研究機関で、研究計画の 進捗や予算、品質管理などに責任を持つプロジェクトマネジャー(PM)のような形で関わり、必要な助言を行う。PM役の一部は民間登用も検討する。技官らは「目利き役」として早期の実用化を見込める研究を探して同庁に支援を要請したり、量産に向けて大手防衛産業企業との間を橋渡ししたりする役割も担う。