沖縄「自衛隊の島」に 進む南西シフト―台湾有事、高まる緊張

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沖縄「自衛隊の島」に 進む南西シフト―台湾有事、高まる緊張(JIJI.COM 2022年04月11日07時12分)

1972年5月の本土復帰から50年を迎える沖縄県では、自衛隊のミサイル部隊や沿岸監視隊の配備が急ピッチで進む。中国が領海侵入を繰り返し、台湾有事も現実味を帯びるなど、沖縄周辺の安全保障環境は激変。今後も「南西シフト」は続く見通しだ。米軍基地が集中する沖縄は、同時に「自衛隊基地の島」になりつつある。

引く米軍

自衛隊は本土復帰に合わせて沖縄に入ったが、部隊規模や拠点数は比較的限られていた。沖縄戦で住民を巻き込む凄惨な地上戦が展開された経緯から「本土」や「軍」に対する反感が強かったのが一因。自衛隊員の転入手続きや成人式出席が地方自治体に拒否される例もあった。

転機は中国の東シナ海進出だ。2000年代以降、尖閣諸島周辺で中国公船の活動が活発化。これを踏まえ、政府は南西諸島の「防衛力の空白地帯」を埋め始めた。

陸上自衛隊は16年に与那国島、19年に宮古島に駐屯地を新設。石垣島にも22年度中に置く方針だ。本島では航空自衛隊第9航空団が16年に編成された。沖縄県によると、県内の自衛隊施設は47カ所、773ヘクタール。規模は8200人となっている。

「中国にとり南西諸島は『壁』になる」。防衛省幹部は、南西シフトの意義は西太平洋の「支配」を図る中国へのけん制にあると強調。防衛力のさらなる整備が必要だと訴える。

一方、復帰時点で83カ所、2万7893ヘクタールあった在沖米軍専用施設・区域は、20年3月に31カ所、1万8484ヘクタールに減少した。地元から整理・縮小要求が繰り返され、結実したケースもある。

米政府は12年、沖縄に一極集中的に配置してきた海兵隊をグアムやハワイ、オーストラリアに分散する方針を決め、在日米軍再編計画の修正に関する日米共同文書に盛り込んだ。中国のミサイル攻撃を想定し、ダメージを最小限に食い止めるのが狙い。実現すれば、1万9000人程度とされる在沖海兵隊はほぼ半減する。米軍と一部入れ替わる形で自衛隊が「対中正面」に出るわけだ。

賛否交錯

「台湾問題の解決と祖国の完全統一は歴史的任務だ」。昨年7月の中国共産党創立100周年記念式典で、習近平総書記(国家主席)はこう明言した。

台湾と与那国島の距離はわずか110キロ。自民党の安倍晋三元首相は「台湾への武力侵攻は必ず日本の国土に対する重大な危険を引き起こす」と訴える。

西太平洋の米中軍事バランスは中国優位に傾き、バイデン政権は同盟国・日本の積極関与を期待する。岸田政権の「敵基地攻撃能力」保有の検討に先立ち、防衛省は陸自の地対艦誘導ミサイルの長射程化に着手。石垣島、宮古島、沖縄本島、鹿児島県・奄美大島にミサイル部隊を置く4拠点構想を進める。

住民は賛否が交錯する。

石垣島のサトウキビ農家・池原吉剋さん(70)は「抑止力になる。基地があれば安全だ」と歓迎する。2月の石垣市長選では、自衛隊配備容認の現職が4選を果たした。

ただ、ロシアによるウクライナ侵攻では、軍事拠点が真っ先に狙われた。こうした作戦は世界的に「常識」とされる。「島に部隊が来るリスクが怖い」。石垣駐屯地予定地の近くでマンゴー農園を営む小林丙次さん(60)はこう語った。

沖縄に配備されている自衛隊主要部隊
沖縄に配備されている自衛隊主要部隊