有機フッ素化合物(PFOS、PFOA) 発がん性の有害化学物質が東京多摩地域で基準値を超える

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多摩地域の井戸10カ所 国指針以上の発がん性有害物質が検出

多摩地域の井戸10カ所 国指針以上の発がん性有害物質 専門家「積極的な原因究明を」(東京新聞 2021年4月19日 23時17分)

東京都が行った多摩地域の57カ所(28市町村)の飲用井戸の水質調査で、発がん性や発育への影響が懸念される有害化学物質の値が、10カ所で国の指針値を上回った。本紙の情報公開請求で分かった。小平市の井戸では指針値の4倍、国立市では8倍超が検出された。識者は都や国による原因究明と規制強化の必要性を指摘した。

製造、使用が禁止された有害物質 都、飲用やめてと助言

有害化学物質は、有機フッ素化合物のPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)。環境中で分解されにくく、体内に蓄積されやすい。有害化学物質を規制するストックホルム条約で製造、販売、使用が禁止されている。厚生労働省は水道水の指針値として1リットル当たりPFOS・PFOA計50ナノグラムまでと定めている。

飲用井戸の調査は、都福祉保健局が昨年(2020年)11~12月に実施。小平市の井戸3カ所はいずれも指針値を超え、最大で200ナノグラムだった。国立市の井戸では430ナノグラムが検出された。ほかに武蔵野、府中、狛江、西東京の4市の井戸6カ所で指針値を上回った。同局は井戸の保有者に飲用をやめるように助言した。

原因は横田基地か、工場か 「規制対象にすべき」と専門家

PFOS・PFOAは、1950年代ごろから消火剤やフライパンのフッ素樹脂加工に使用されてきた。この問題を長年取材する英国人ジャーナリストによると、米軍横田基地(福生市など)で、2010~17年にPFOSを含む泡消火剤3000リットル以上が土壌に漏出したとされる。

国内外で水質調査を実施してきた小泉昭夫京都大名誉教授(環境衛生学)は「地下水の流れは複雑で、原因は横田基地か工場か分からない」と指摘。その上で「都は不確定なことが多いからと放置するのではなく、積極的に原因究明に取り組むべきだ」と求めた。国に対しては「土壌汚染対策法の規制対象にPFOS・PFOAを入れることが大切だ」と語った。

都が調査を始めた18年には、横田基地周辺の立川市内の井戸で、現在の指針値の約27倍を検出。国立市や狛江市、武蔵村山市の井戸でも指針値を上回っていた。19年の調査では東村山市の井戸で指針値の4倍超、調布市で7倍超が検出されていた。

都水道局によると、水道水に関しては、現在は都内すべての給水栓で指針値を下回っている。19年の調査で府中、国分寺両市の浄水場で指針値を上回るPFOS・PFOAが検出されたが、水源の一部の井戸から取水を停止するなどの対策を取った。

有害物質の血中濃度が府中は2倍、国分寺は1.5倍

【独自】有害物質の血中濃度が府中は2倍、国分寺は1.5倍 昨年、浄水所で指針値超え(東京新聞 2020年10月29日 05時50分)

NPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」が調査

水道水の汚染が指摘された東京都府中市と国分寺市の住民を対象にNPO法人が実施した血液検査で、発がん性や発育への影響が懸念される有害化学物質の血中濃度の平均値が府中市で全国平均の2倍超、国分寺市で1.5倍だったことが分かった。両市の浄水所では2019年まで指針値を上回る有害化学物質が検出されていた。NPOは国と都に幅広く住民の健康調査を実施するよう提言する方針だ。

この物質は有機フッ素化合物「PFOS(ピーフォス)」。NPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」(東京都江東区)が8月、19年の都の調査でPFOSなどの有機フッ素化合物が指針値を超えた府中市府中武蔵台浄水所と国分寺市東恋ケ窪浄水所の配水区域内に5年以上居住する住民22人の血液を調べた。

調査では、血液成分の約半分を占める血漿中の濃度を測定した。府中市の住民11人のPFOS平均値は血漿1ミリリットル当たり18ナノグラムで、全国平均8.2ナノグラムの2倍を超えた。国分寺市の住民11人の平均値は12ナノグラムだった。

厚生労働省は今年(2020年)4月、水道水の指針値としてPFOSと、別の有機フッ素化合物「PFOA(ピーフォア)」を合わせ1リットル当たり50ナノグラムまでと定めた。都の19年の調査で、府中武蔵台浄水所は60ナノグラム、東恋ケ窪浄水所は101ナノグラムと指針値を上回った。都は同年6月に水源の一部の井戸からの取水を停止。都水道局によると、現在は指針値を下回っているという。

水道水の汚染源は米軍基地の可能性も

多摩地区の水道水の汚染源としては、米軍横田基地(福生市など)の可能性が取りざたされている。18年には英国人ジャーナリストが米軍の内部資料に基づき、横田基地で10~17年にPFOSを含む泡消火剤3000リットル以上が土壌に漏出したと報じている。

PFOSとPFOAは1950年代から消火剤やフライパンのフッ素樹脂加工に使用され、現在はストックホルム条約で製造、販売、使用が禁止されている。環境中で分解されにくく、地下水などを通じて体内に蓄積されやすい。

NPO理事で熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は調査結果に関し「今すぐに健康に影響が出るレベルではない」と指摘。その上で「全国平均に比べると明らかに高い。原因は米軍基地か工場か分からない。行政が究明しないといけない」と語った。