シカ科の特定外来生物「キョン」が千葉県内に大量発生 台湾では高級食材

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台湾では高級食材の「キョン」、県が「房総ジビエ」にしない理由とは?

台湾では高級食材の「キョン」、県が「房総ジビエ」にしない理由とは?(読売新聞 2022/02/13 23:18)

千葉県南部で大繁殖し、農作物に被害をもたらしているシカ科の特定外来生物「キョン」の封じ込めに、県が本腰を入れている。捕獲数は年々増え、撲滅に向けた「防衛ライン」も初めて設定。台湾では高級食材として知られ、県内でもキョンの肉を販売する動きもあるが、県は慎重だ。理由を探ると、特定外来生物ならではの事情が見えてきた。

キョンは体高50センチほどの草食獣で、元々の生息地は中国南東部や台湾。国内では伊豆大島と房総半島で確認されており、県内のキョンは勝浦市の観光施設から野生化したとみられる。

繁殖力が強く、県の推計によると、2006年度に約9100匹だった生息数は、19年度には約4万4000匹に激増。生息域を拡大し、農業被害も深刻化しつつある。「ギャー」という大きな鳴き声に苦情も寄せられている。

これ以上の拡大を防ごうと、県は21年度から5年間の防除実施計画を策定。一宮町と市原市を東西に結ぶ「分布拡大防止ライン」を設定し、年間8500匹以上の駆除を目指している。

国内屈指の農業県である千葉県にとって、有害鳥獣の被害は深刻な問題だ。キョンを含め、イノシシやシカなどによる農作物被害は20年度、約3億5900万円に上り、イネや野菜、果樹の被害が後を絶たない。

対策の一環として、県は捕獲されたイノシシとシカの肉を「房総ジビエ」と銘打ち、飲食店での活用やジビエ料理コンテストの開催などで消費を促している。ただ、特定外来生物のキョンは、その対象にできないという。

環境省によると、特定外来生物を食べること自体は規制されないが、許可のない飼育や生きたままの運搬、野外に放つことは禁止されている。キョンの肉に市場価値を与えれば「外に放したり、飼育したりする行為により、生息域の拡大につながる恐れがある」(県流通販売課)といい、県は将来的なキョンの撲滅を掲げる立場だ。

一方で、キョンの肉を消費する動きもある。君津市の「猟師工房ランド」では、ジビエ(野生鳥獣の肉)として代表的なイノシシやシカのほか、アライグマやハクビシンといった動物の肉を販売している。

鴨川市などで捕獲されたキョンの肉も、その一角に並ぶ。ヒレやロースなどの部位があり、価格は100グラムあたり810~1760円。身質が軟らかく、原田祐介代表(49)が「キョンを目当てに来る人もいる」という人気ぶりだ。

原田さんは「特定外来生物として撲滅すべきという思いは行政と同じ。いただいた命を活用する役割を担いたい」と話す。キョンの肉を扱うのも「撲滅まで」と決めているという。

鳥獣対策に詳しい岐阜大野生動物管理学研究センター長の鈴木正嗣教授は「商業的利用が行き過ぎると、外来生物対策として間違ったメッセージになる」と指摘。キョンの駆除に向けて「行政がハンター任せにせずに事業として駆除に取り組むことで、防除実施計画に実効性を持たせることが重要だ」と話している。

「キョン」が大量発生 千葉県内で4万4000頭を超え被害相次ぐ

「キョン」が大量発生 千葉県内で4万4000頭を超え被害相次ぐ(変えていく、トレンドがちから 2021年11月4日)より抜粋

キョン

中国の南東部、広東省及び台湾に生息しているとされるキョンは後に日本の房総半島や伊豆半島、イギリスにも移入される。

シカ科の動物で環境省指定の外来生物であるキョンは独特な鳴き声をするのが特徴である。

キョンは森林ややぶなどに生息することを好み、群れではなく単独で行動することが多く、主に木の葉や果実などを主に食べる。

特定の繁殖期はなく、メスは1年を通じて繁殖するとされるが、特に4~7月にかけての出産が多いとされ、1回につき1匹の幼体を出産するという。

最近、その生息数を激増した背景には以前、1980年代に千葉県勝浦市にあった観光施設「行川アイランド」から逃げ出したとされ、房総半島で野生化したものが相次いで目撃されるようになった。

また、気候が温暖で餌となる下草に恵まれていることもあって、その個体数は年々増え続け多くの被害を引き起こしている。

これまでも各自治体で駆除計画が進められていったが、繁殖する数に追いつかず、千葉県内を始め東京や埼玉などの地区にも広がっている。

キョンの利用について

キョンのなめし皮はとても細かく、セーム革の中でも最高級品とされ楽器やカメラレンズ、骨董品、刀剣などの手入れのほか、理美容品の素材として、日本国内でもこれまで輸入され使用されてきたとされる。

また、肉質も柔らかく脂肪も少ないキョンは福建料理、台湾料理、安徽料理などの中華料理では薄切りまたは細切りにし、野菜などで炒め物にされている。

味は牛肉の赤身に似た味わいで中国や台湾では高級食材とされ、1頭の食事では日本円で約6万円ほどかかるという。

キョンのジビエ化(商品化)については日本国内でも大繁殖する房総半島を中心に進んでいる。

千葉でキョンが大量出没!都市部に迫る野生動物の意外な潜伏場所(NHK 2022年2月2日) より

ジビエ

ジビエとは狩猟によって食材として捕獲された野生の鳥獣のことを指すが、畜産の豚や牛との対比として一般的に狩猟肉として扱われている。

近年ではシカやイノシシなどを中心に農作物被害対策として狩猟されたものをジビエ料理として供給するビジネスが徐々に拡大しつつあるが、一方でジビエを珍味として生食することもあり、感染症や肝炎、寄生虫のリスクがあり非常に危険視されている。

主なジビエ料理に使われる食材には鳥類としてマガモやアヒル、キジ、ライチョウなどがあり、獣類系にはウサギやシカ、イノシシ、クマなどの肉がある。

ジビエのハンティングでは銃弾の種類によって可食部分が大きく損傷してしまい、内臓が飛び散って味が悪くなってしまうことがあり、ジビエ特有の獣臭は血抜きの技術に大きく左右され、血が残っているとそれだけ獣臭の臭さは強くなる。

そして逃げまわった獣は体温が上昇しているため、なるべく早めに肉を冷やさなければ急速に旨味が損なわれてしまうと言われている。

そのため、仕留めた後も血抜きや解体といった処理を行う習慣があり解体は内臓を摘出し、綺麗な水で肉を冷却し皮を剝いでから脱骨や精肉をする。