立憲民主党・水岡俊一参議院議員 政府4演説に対する代表質問及び答弁(全文)

立憲民主党・水岡俊一議員_代表質問 政治・経済

代表質問 水岡俊一・参議院議員(立憲民主党 参議院議員会長)

 水岡俊一君 立憲民主・社民の水岡俊一です。
 会派を代表して、岸田総理、関係大臣に対し、質問をいたします。

1月17日は阪神淡路大震災の日

 六千四百三十四人もの人々が亡くなられた阪神・淡路大震災から二十七年。被災地の神戸では、一月十七日に追悼の集いが行われました。灯籠により浮かび上がった一・一七と忘れないという文字は、忘れてしまわないようにという願いだけでなく、余りにつら過ぎて忘れたいという思い、そして、忘れ去られてしまうのではないかという危機感などの意味が込められていたと思います。
 二十七年という月日は、当時を知らない、まだ生まれていなかったという世代が増え、当時の記憶や教訓をどのようにしてこれからの世代に伝えていくかを私たちに問うてきています。
 忘れ去られるというのは、若い世代だけでなく、政府の面々にも言えることです。今次国会開会日はよりによって一月十七日、震災後初めてのことです。それだけで一・一七が薄れていくのは間違いありません。総理始め大臣は誰一人被災地に赴くことはできず、追悼、復興の思いを共有することをしなかった。悲しく、つらい、しかし、忘れてはならない記念日を重要視しなかった。

 そこで、総理に最初の質問です。
 内閣は今次国会開会日をどうして一月十七日としたのですか。一日だけでも遅らせることができなかったのでしょうか。そもそも、阪神・淡路大震災を教訓としてこれからの減災・防災を重要視する考えが及んでいなかったのでしょうか。

トンガ海底火山噴火 津波避難と現地支援

 質問二です。
 先日はトンガの海底火山噴火による津波が日本を襲いましたが、感染対策との兼ね合いで避難所対応が難しい状況でした。政府としてその対応をどのように検討され、何を優先すべきと指示されていたのでしょうか。また、トンガ現地の状況がだんだんと明らかになる中で、日本としても過去の災害経験に基づき、必要とされる支援をできる限り行うべきと考えますが、政府はどのような現地支援策を検討しているのでしょうか。

日中・外交

 二〇二二年は日本と中国の国交が正常化して五十年を迎える節目の年です。
 岸田総理は、元旦に放送された民放の番組で、本来であればお祝い気分になるのかもしれないと国交正常化五十年の率直な思いを吐露しつつ、現状を見ると、緊張感を持って、この関係をどう安定させるのか、日本外交のしたたかさみたいなものが問われる年になると述べています。
 今回の施政方針演説では、中国には主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めるとしつつ、共通の課題には協力し、建設的かつ安定的な関係の構築を目指しますとおっしゃっていたことを併せて考えると、岸田総理が未来に向けてどのような日中関係を築こうとされるのか、よく見えてきません。

 そこで、質問三です。
 日中国交正常化五十周年となる今年は日中間に横たわる課題を解決するに当たって絶好の機会となると考えますが、総理は具体としていかなる課題に対して解決の努力をされますか。

 さらに、質問四です。
 歴代総理の語録の中には、福田赳夫元首相が東南アジアとの相互理解の関係性を打ち出した福田ドクトリン、大平正芳元首相が政治、経済面の非軍事的側面の重要性を打ち出した総合安全保障など、外交姿勢を明確に表明したものがあり、後の政治に大きな影響を残しています。では、岸田総理のおっしゃる新時代のリアリズム外交とは具体的にどのようなものですか。是非御説明いただきたい。

ウィシュマさん入管死亡事件

 岸田総理は人権外交に積極的だと聞きました。
 人権外交とは何でしょう。人権外交とは、世界で人権侵害を許さないよう国際会議や首脳会議で訴えることであります。日本が中国のウイグル自治区における人権弾圧問題を解決するために積極的に取り組むことは極めて重要であり、国際的な動きと協調するものです。しかし、国内では男女差別に始まり、アイヌ、被差別部落、外国人、障害者、朝鮮学校の生徒に対する差別など数々の人権侵害が存在し、有効な手段が講じられていない現実がある限り、日本の人権外交は説得力を持ちません。国内の問題を本気で解決することができない国が人権外交をうたっても、まさに裸の王様、世界の笑い物です。
 国内の人権政策を考える上で重要なポイントは、国際標準に照らし合わせてきちんとチェックすることです。
 例えば、入管施設で虐待により死亡された三十三歳のスリランカ女性、ウィシュマ・サンダマリさんの事例を考えるとき、実は入管による恣意的な長期収容の問題に対して、以前から国連の国際自由権規約委員会、拷問禁止委員会、人種差別撤廃委員会が日本政府に対して繰り返し是正勧告や批判を行ってきた事実があったわけです。それらの勧告をしっかり受け止め、入管行政に対して不断の検証を行っていれば、ウィシュマさんの悲劇的な死も未然に防ぐことができたのではないでしょうか。
 質問五です。
 岸田総理は、入管において国際自由権規約委員会等からの度重なる是正勧告を無視し、適切な対応を取らなかったのは、どこに問題があったと考えますか。

 ウィシュマさんが入管施設で死亡に至った経緯が記録されたビデオを見ましたか。ビデオを見た参議院法務委員で我が党の有田芳生議員からは、入管職員の対応は拷問を通り越し、緩慢な殺人と言われても仕方ないと聞いています。日本の公権力が命を軽んじていたかどうかを総理は自分の目で確認されてはどうですか。

 これまで入管は、一九七八年最高裁判決で示された、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎないとの判断を金科玉条とする姿勢を崩してこなかったと見られます。日本としては、外国人排除ではなく、基本的人権の尊重が最も優先されるべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

アイヌ遺骨問題

 日本が国際社会から是正勧告を受けている問題は多数あります。その一つは、アイヌ遺骨問題です。
 二〇一九年五月にはアイヌ施策推進法が成立し、アイヌの人々を先住民族と法律上初めて明記しました。アイヌの人々の民族的な誇りが尊重される社会が実現する上で、極めて重要な一歩であったと思います。
 二〇二一年十月、国連総会に提出された国連人権理事会のファビアン・サルビオリ特別報告者による報告書では、略奪された先住民族の文化遺産、例えば儀式用の物品や遺骨の盗骨は、公正で透明性のある方法で先住民族の皆さんに送還する必要があると指摘しています。
 余りに非道なことですが、琉球遺骨盗掘と全く同じ歴史的、社会的状況の下で、大学研究者がアイヌの遺骨を研究用と称して盗掘していたことが明らかになっています。これは事実であり、記録、証拠も残っています。

 質問六です。
 岸田総理、身元も明らかな遺骨を勝手に墓から盗み取り、研究用だからといって政府が返還を渋るなどということがあってよいのですか。アイヌの人々に一刻も早く返還すべきだと思いませんか。

個人通報制度、国内人権機関

 さて、日本が国際社会の求めに応じて人権諸条約で定められた権利を守るためには、人権侵害を受けた全ての人を救済する個人通報制度の創設が急務です。
 個人通報制度とは、人権侵害を受けた被害者が、条約に基づき設置された条約機関に直接通報し、救済を求めることができる制度です。
 信じ難いことに、G7の中で何ら個人通報制度を持たないのは唯一日本だけなのです。OECD加盟三十七か国の中では日本とイスラエルだけが個人通報制度を持たない国だということであり、誠に恥ずべきことではないでしょうか。
 また、政府から独立し、簡易迅速な人権救済のための国内人権機関の設置も急務です。世界では既に百二十以上の国内人権機関が設置されていますが、日本ではいまだに設置されていません。

 そこで、質問七です。
 個人通報制度の創設や国内人権機関の設立に対して、国連からは何度もその実現に向けて取り組むよう勧告がなされていますが、人権外交を掲げられた岸田総理にこそ国内人権制度を確立する責務とチャンスがあると考えますが、いかがですか。

国連監視機関への委員派遣

 質問八です。
 現在、国際人権規約批准国として日本は各監視機関に委員を派遣してきていますが、その数は近年五年間でどのように推移していますか。徐々に減っているとすれば、外務大臣の経験も長い岸田総理として、どのような見解をお持ちでしょうか。

気候変動問題

 世界十か国の一万人の若者を対象とした調査で、九割以上が気候変動を心配しており、環境危機への不安から、将来子供を持つことにためらいを覚えると答えた人が何と約四割いたということです。こうした不安の声や心理的苦痛を日本は十分に受け止めていると言えるでしょうか。温室効果ガス削減目標を明確に定めている以上、日本政府は世界各国と連携して、一刻も早く問題解決に向けた政策を実施すべきです。
 岸田総理は、現在の資本主義の弊害として気候変動問題の深刻化を挙げ、新しい資本主義では脱炭素に向けた投資を拡大すると表明しています。
 ところが、日本の脱石炭への取組は、その遅れが指摘されています。昨年策定されたエネルギー基本計画では、政府は二〇三〇年時点で約二〇%もの石炭火力発電を維持するとしています。加えて、昨年十一月に開催されたCOP26では、石炭火力発電を段階的に廃止する四十か国以上の声明に日本は加わりませんでした。
 また、不名誉なことに、日本は温暖化対策に消極的であるとして化石賞を受賞しました。総理がCOP26の演説で既存の火力発電を活用し続ける方針を表明したことがその理由だということであります。

 そこで、質問九です。
 政府は、現状の計画を積極的に見直し、より良い具体策を進めるべきではないですか。化石賞を受賞してしまった責任と国際社会から消極的との指摘に対する受け止めも含め、総理の見解を伺います。

辺野古移設問題

 本年五月十五日をもって、沖縄は本土に復帰して五十年となります。
 辺野古移設問題に対して、総理は昨年十二月の所信表明で、辺野古移設こそが唯一の解決策と述べています。しかし、沖縄県民の民意は、二〇一九年の住民投票の結果で約七二%もの反対として明確に示されているので、それは全く説得力を持ちません。総理お得意の聞く力は、沖縄については封印したのですか。総理は辺野古移設の解決策を住民抜きで勝手に断定しないでいただきたい。
 昨年亡くなられた作家の半藤一利さんは、沖縄問題に対して、内政的には選挙で県民の意思を問うたのに、その結果を生かせず、外政的には何らアメリカと交渉していないとの言葉を残し、日米地位協定も含めて沖縄をめぐる問題が解決に至らないのは、戦後日本の政治家が誰も挑んでいないからだと厳しく批判しています。

 そこで、質問十です。
 総理は、常に沖縄地元と丁寧な説明、対話をすると発言されますが、内政的には既に住民投票で結論が出ています。むしろ求められるのは、沖縄の人々に強権的に物事を押し付けるという内弁慶的な態度ではなく、県民の意思を受けて外政的に米国と交渉し直すことではありませんか。住民の意思を無視して政策を強行することは、国際社会から見ても、内政について日本政府が無能であることを証明しています。総理の見解をお聞かせください。

 また、辺野古移設には軟弱地盤という問題が発覚しています。米国のシンクタンクであり、歴代大統領にも政策提言を行ってきた戦略国際問題研究所は、二〇二〇年十一月の報告書で費用の急騰からも完成する可能性が低いと指摘し、米国内からも疑問視する動きが出ています。完成も二〇三〇年代半ばとされ、その間、普天間の危険は除去できません。

 質問十一です。
 埋立工事は五年がたとうとしているのにまだ一割も進んでおらず、度重なる契約変更で工事費用はうなぎ登りです。この際、先行きも見通せず民意から離れた工事は中止し、別案を模索することに総理として挑んではどうですか。

在日米軍基地でのコロナ感染問題

 政府は六日に、まん延防止等重点措置、いわゆるまん防を沖縄、広島、山口へと適用しました。昨日、十三都県が追加をされましたが、最初に適用された三つの県に共通するのは米軍施設を擁していることです。今回、これらの県での感染拡大の一因は、米軍基地からのしみ出しであることが否めません。
 日米地位協定第九条により米軍関係者には日本の検疫法が適用除外となっていることが改めて問題視されており、国民の命を守る観点から早急に見直しをすべきだと考えます。

 質問十二です。
 林外務大臣、現時点で最新の在日米軍基地内の感染者数は何人ですか。そのうち在沖縄米軍の感染者数は何人ですか。米軍は韓国など他の目的地への出国時は検査を義務付けていたのに、日本だけが除外されていた事実について、日本が他国並みの措置を求めることができなかったのはなぜですか。お答えください。

コロナ禍と教員不足

 岸田総理のこの度の施政方針演説には、教育を中心とした項目はなく、教育という文字もほとんど見当たりません。極めて残念です。
 今、学校現場では、感染症の流行拡大によって、ただでさえひどかった人員不足が深刻化していることを総理は御存じでしょうか。
 新年度四月の始業式で担任の発表ができない、担任に管理職や臨時採用教員を充てる、病休、産休の代替教員が見付からないためにその業務をカバーした教職員がまた倒れるというような事例が全国の現場から数多く寄せられています。法律で定められた人員配置がなされず、どうしようもなく未配置のままで業務に当たっている学校が数多くあるのが現状です。

 質問十三です。
 近年、教職員のなり手が不足している上に、感染症対策で従来から問題視されていた業務量がますます膨らみ、その結果、体調や精神を崩し、更に人員不足が加速するという負のスパイラルに学校現場は陥っています。岸田総理として、この現状をどう分析し、どう打開していくお考えなのか、お聞かせください。

GIGAスクール構想におけるメディアリテラシー

 さて、政府肝煎りというべきGIGAスクール構想は、ICTを利用した教育により、コロナ禍において学びの可能性を広げるものであることは間違いありません。ただ、昨年この場所で私が菅前総理に提起したように、子供たちの視力悪化などの新たな課題も山積しています。
 ここで絶対に忘れてはならないのがメディアリテラシー教育です。メディアリテラシーとは、テレビや新聞などのメディアを主体的に読み解く能力、インターネット社会で過剰にあふれる情報を取捨選択して正しい情報を見極める能力のことです。
 フィンランドではメディアリテラシー教育に力を入れており、小学校の授業でフェイクニュースなどについて学びます。一クラス二十人前後の少人数学級を生かし、児童と教員が対話しながら行われています。日本でも、一部の私立学校で外部の有識者を招いてメディアリテラシーの授業を行う取組が始まりつつあります。メディアリテラシー教育を進めながら教育のデジタル化を進めていく、それが真のGIGAスクール構想ではないでしょうか。

 質問十四です。
 GIGAスクール構想においてのメディアリテラシー教育の重要性について、総理はどのようなお考えをお持ちでしょうか。GIGAスクール構想の充実、そして子供たちが未来を生き抜く学びのためにも、少人数学級化、教職員の加配を進めていく考えはお持ちでしょうか。

教育データ利活用ロードマップ

 最近、政府は、デジタル化推進の一環として、教育データの利活用を広げていく計画である教育データ利活用ロードマップを発表しました。
 その計画には、学習履歴を含めた個人の教育データを保存する仕組みを整備することで幾つかメリットがあるとされています。しかし、履歴として保存する情報の対象には、生徒のテスト結果や健康・体力履歴などに加え、子供たちが若いときに起こしてしまった過ちなど、極めてプライベートなものも一生保存される可能性があります。民間企業や自治体間でそうした情報の利活用を安易に認めてしまえば、何よりもまず個人情報保護法の理念に抵触することは言うまでもありません。

 そこで質問十五です。
 ただでさえ、個人情報の漏えいで個人の更生が妨げられるなどの問題が生じており、忘れられる権利が主張される社会となっています。総理は、教育データを保存する仕組みにより不当な選別、差別が起こり、人権侵害が助長される懸念に対して、どのように対処するつもりでしょうか。

子どもの貧困

 昨年、内閣府は初めて全国規模での子供の貧困に関する調査を行いました。この調査の結果では、収入が低い世帯、そして、一人親世帯、特に母子家庭の置かれている厳しい状況が浮き彫りになっています。一人親世帯の約三割に食料が買えなかった経験、約四割に衣類が買えなかった経験があるといいます。公共料金の未払が発生している率も、収入の低い世帯と一人親世帯では全体の比率の約三倍でした。そして、新型コロナウイルス感染症の影響で生活が厳しくなっているのもこのような世帯だということが数字として如実に表れています。

 質問十六です。
 子供政策ど真ん中とうたう岸田政権は、この調査の結果をどのように受け止めますか。そして、今後、この調査を踏まえて、子供の貧困に関してはどのような対策を講じますか。

 全国の自治体でも同様の調査を是非継続して、子供たちが置かれている状況を把握してほしいと願います。各自治体にこの調査を進めてもらうためには、国としてもしっかりとサポートをするべきと考えますが、総理は各自治体で同様の調査への動きがあるか把握していますか。各自治体での調査を進めるための策は講じているのでしょうか。お答えください。

 十八歳以下への給付金について、直近の離婚などで実際に養育している親の手元に届かず、受け取れない子供たちが推計四万人も存在しています。立憲民主党は十八日、離婚世帯子ども給付金支給法案を提出しました。困窮する一人親世帯へは一刻も早い給付が求められます。未達の子供たちへの素早い給付を進めるつもりはありませんか。

ガソリン価格高騰

 高値ながらもやっと値段が下がりつつあったガソリン価格が先週値上がりに転じました。今後も値上がりが予想されています。灯油価格も高騰し、雪が多い地域などを中心に極めて大きな打撃を与えている状況です。
 ガソリン価格が一定の水準に高騰した場合にガソリンなどに係る税を引き下げるトリガー条項は、東日本大震災の復興財源に充てるために凍結をしていますが、今、立憲民主党は、トリガー条項の凍結を解除しガソリン価格を下げるべきだと求めています。
 松野官房長官は、ガソリンの買い控えやその反動による流通の混乱、国、地方の財政への多大なる影響などの問題があるため、トリガー条項凍結解除は適当でないと発言されていましたが、果たしてガソリンの買い控えが本当に起きるのでしょうか。

 質問十七です。
 岸田総理、ガソリンや灯油は私たちの暮らしに密接に関わっています。寒冷地では命の問題だと言っても過言ではありません。今に至っても、トリガー条項の凍結解除は適当でないとお考えでしょうか。

人口減少問題

 総務省が発表した二〇二〇年国勢調査の結果によると、日本の総人口が五年前より九十四万八千六百四十六人減少し、確実に人口減少局面に入ってきたことを示しています。そこで、五年で約九十五万人減ということをどう見るべきでしょうか。
 二〇〇八年に日本の人口が減少に転じたということは周知の事実でありますが、二〇三〇年には大幅な人口減少が起きることが叫ばれています。さらに、今後十年間で総人口が一千百万人減少するという政府は予測をしていますが、それからすると、五年で約九十五万人減という数字は余り心配するものではないと考えてしまうかもしれません。
 ここで注意が必要です。実は、外国人の人口は五年間で八十三万五千人増えていて、日本人の人口は何と百七十八万三千人も減っているのです。つまり、差引きで総人口はほぼ九十五万人減にとどまっているわけです。日本人の人口は減少に転じてから放物線を描くように減っていくと予測されており、加速度的に減少幅が大きくなります。二〇六〇年には二〇二〇年の三二%減、三割減になるとまで言われています。

 質問十八です。
 岸田総理は、いよいよ日本人の人口が減少する局面に入り、減少速度が加速度的に進むことが予測される現状をどのように認識をされ、生産人口の急激な減少等も含め、今後の展望、対策をお考えなのか、お答えをください。

 以上で、総理及び大臣の真摯な答弁を求めまして、私の質問を終わります。
 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

水岡俊一議員の質問に対する総理及び大臣の答弁

岸田文雄・内閣総理大臣の答弁

 水岡俊一議員の御質問にお答えいたします。

(阪神淡路大震災)

 今国会の召集日についてお尋ねがありました。
 今国会の召集日については、国会法の規定を踏まえ、予算編成作業など諸要素を総合的に勘案し、一月十七日に決定したところです。その上で、施政方針演説において、二十七年前の今日、阪神・淡路大震災が発生し、六千名を超える尊い命が失われましたと述べさせていただきました。
 改めて、この震災により亡くなられた方々に対し、心から哀悼の意を表します。
 政府としましては、この震災を教訓に、それまで以上に災害対策や危機管理の充実を図ってまいりました。岸田内閣としても、引き続き強い覚悟を持って防災・減災、国土強靱化を強化してまいります。

(トンガ諸島の火山噴火)

 トンガ諸島の火山噴火に関連して、避難所における感染症対策や現地支援についてお尋ねがありました。
 新型コロナの現下の状況においても、災害時に身の安全を確保するためには、ちゅうちょすることなく避難することが重要です。
 政府としては、これまでも自治体に対し、可能な限り多くの避難所の開設、親戚の家等への避難の呼びかけ、避難所の衛生管理等、平時の事前準備及び災害時の対応についてお示ししてきており、今回の避難においても、各自治体においてはこれらの点に留意をして対応していただいたものと認識をしております。
 トンガへの支援としては、我が国として復旧復興のためにできる限り支援を行うため、トンガ政府からの要望も踏まえ、トンガ政府に対して百万ドル以上の緊急無償資金協力を実施することといたしました。また、緊急援助物資として、飲料水及び火山灰撤去のための用具等を供給することで決定をいたしました。その輸送のため、自衛隊のC130輸送機等を活用し、早ければ本日にも出発させます。
 引き続き、災害対応に万全を期すとともに、トンガへの支援については、オーストラリアやニュージーランドといった関係国と緊密に連携して対応してまいります。

(日中関係)

 今後の日中関係についてお尋ねがありました。
 日中両国間には、隣国であるがゆえに様々な問題があります。尖閣諸島をめぐる情勢を含む東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試み、我が国周辺における軍事活動の拡大、活発化は、日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念です。
 中国には、こうした課題を含め、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化五十周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指してまいります。

 新時代リアリズム外交についてお尋ねがありました。
 我が国を取り巻く安全保障環境の急速な変化や緊張する米中関係などにより、厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、私は、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、したたかで徹底的な現実主義を貫く外交、これを展開してまいります。これが私の掲げる新時代リアリズム外交であります。
 こうした考えの下、まず一つは普遍的価値の重視、二つ目として地球規模課題の解決に向けた取組、そして三つ目として国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組、これらを三本柱とした外交、これを積極的に進めてまいりたいと考えております。

(ウィシュマさん入管死亡事件)

 出入国在留管理行政についてお尋ねがありました。
 まず、改めて、お亡くなりになられたウィシュマさんに心より哀悼の意を表するとともに、御遺族に対しお悔やみを申し上げます。
 自由権規約委員会等から様々な指摘があることは承知していますが、我が国としては、国際人権諸条約の締約国として条約が定める義務を誠実に履行していると考えています。

 御指摘のビデオ映像については、私自身は閲覧しておりませんが、法務省において、その内容を精査し、外部有識者から御意見もいただきつつ、幅広く問題点を抽出した上で改善策を着実に進めているものと承知をしており、このような事案が二度と起こらないよう、法務省においてしっかりと取り組んでもらいたいと考えております。

 言うまでもなく、基本的人権の尊重は重要であり、引き続き、日本人と外国人が安全、安心に暮らせる共生社会の実現、目指してまいります。

(アイヌ遺骨問題)

 アイヌの人々の御遺骨の返還についてお尋ねがありました。
 政府としては、閣議決定に基づき、アイヌの人々へ御遺骨の返還を進めるとともに、直ちに返還できない御遺骨については、アイヌの人々の意向を確認しつつ、適切な返還先が確定するまでの間、国の民族共生象徴空間の慰霊施設において適切な管理を行うこととしております。
 また、慰霊施設においては、管理する御遺骨を用いた調査研究を行わないこととしており、大学の保管する御遺骨についても、国のガイドラインにおいてアイヌの人々の同意を得られないものは調査研究の対象としないこととしております。
 今後とも、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現が図られるよう、御遺骨の返還について適切に対応してまいります。

(人権救済制度)

 人権救済制度等についてお尋ねがありました。
 人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況も踏まえ、不断に検討しております。例えば、個人通報制度の導入については、人権諸条約に基づく委員会の見解に対しどのように対応するかなど、我が国の司法制度や立法政策等に関わる論点があるため、各方面の意見なども踏まえつつ真剣に検討しているところです。

 また、日本出身の人権条約体の委員の数については、各年一月二十日の時点で申し上げますと、二〇一八年、二〇一九年、二〇二〇年は六名、二〇二一名は五名、二〇二二年は四名となっています。
 国際社会における人権の保護、促進を重視する我が国からは、このように人権条約体に他国と比べても多くの委員が輩出されています。これらの委員は、それぞれの個人の資格で各委員の活動に大きく貢献をしています。
 引き続き、我が国としては、多くの日本出身の委員が活躍できるよう取り組んでまいります。

(気候変動と火力発電)

 そして、石炭火力発電についてお尋ねがありました。
 石炭火力については、二〇三〇年に向けて、非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に進めてまいります。
 さらに、二〇五〇年に向けては、水素、アンモニアやCCUS等を活用して、それらのコストを引き下げつつ、石炭火力を脱炭素型の火力に置き換える取組を加速していきます。二〇五〇年のカーボンニュートラルになっているということは、二〇五〇年の段階で温室効果ガスを排出する石炭火力は基本的にないということを意味しております。
 なお、御指摘の化石賞は、民間団体の活動の一つと承知しており、政府としてコメントをすることは差し控えますが、その上で申し上げれば、COP期間中十二日間にわたり、主催国英国が四回受賞するなど、延べ二十か国以上が受賞しているものと承知をしております。
 他方、今回のCOP26において、我が国が表明した五年間で百億ドルの国際的な支援という新たなコミットメントについては、多くの参加国から高い評価と歓迎の意が示され、存在感を示すことができたと考えております。

(辺野古移設問題)

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。
 御指摘の地盤改良工事については、有識者の助言を得つつ検討を行った結果、十分に安定した護岸等の施工が可能であることが確認されていると承知をしており、また、工事費については引き続き抑制に努めてまいります。
 世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通の認識であると思っています。
 米国とは、閣僚間を含め様々なレベルにおいて、日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考えましたとき、辺野古移設が唯一の解決策という方針について累次にわたり確認をしてきたところであります。

 この方針に基づき着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。これからも、丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築いてまいります。

(教員不足問題)

 教育行政についてお尋ねがありました。
 子供たち一人一人が質の高い教育を受け、個性や能力を最大限伸ばせるよう、環境整備をしていくことが必要です。
 御指摘の教師を取り巻く環境について、実態調査の結果を踏まえ、働き方改革等の取組を一層進めながら、教師の魅力を高めるための取組を進めてまいります。
 また、小学校の三十五人学級の計画的な整備や、高学年の教師担任制の推進のための加配定数など、必要な教職員定数の確保を進めてまいります。

(メディアリテラシー)

 さらに、デジタル田園都市国家構想の実現において教育分野のデジタル化は重要な課題であり、各学校段階でメディアリテラシーを含む情報活用能力、これしっかり育成をしてまいります。

 教育データの利活用については、安易な利用により本人が不利益を受けることがないよう、個人情報保護のルールに沿って丁寧に検討を進めてまいります。

(子供の貧困)

 子供の貧困に関する調査や子育て世帯への給付についてお尋ねがありました。
 御指摘の調査は、一人親世帯などがコロナ禍で一層多くの困難に直面していることを改めて示していると考えています。こうした状況を踏まえ、これまで、低所得の子育て世帯へ臨時交付金の支給や、地域子供の未来応援交付金を活用した居場所づくり支援などを重層的に実施をしてきました。
 今度、今後、こども家庭庁の下、子供政策を我が国社会のど真ん中に据えて進めていく中で、調査研究を更に充実していくなど、子供の貧困の課題にもしっかりと対応してまいります。各自治体で同様の調査を独自に行いたいという意向も伺っており、引き続き、地域子供の未来応援交付金による支援などを行ってまいります。

 また、子育て世帯への給付については、迅速に給付するため、児童手当の仕組みを活用しており、基準日以降に離婚した世帯への制度的な対応は難しい面がありますが、自治体に対し、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して、基準日以降に離婚された場合の現在養育者への給付金の支給を検討することをお願いするとともに、生活に困窮されている一人親家庭に対して、住民税非課税世帯に対する十万円の臨時特別交付金のほか、生活困窮者自立支援金など様々な施策を重層的に講じる中で、きめ細かく支援を行うこととしております。

(ガソリン価格の高騰とトリガー条項)

 トリガー条項の凍結解除についてお尋ねがありました。
 トリガー条項については、発動された場合、ガソリン、軽油の買い控えや、その反動による流通の混乱、また国、地方の財政への多大な影響等の問題があることから、凍結解除は適当ではないと考えております。
 政府としては、国民の皆さんが春先まで見通せるように、農業や漁業等に対する業種別の対策をきめ細かく実行いたします。加えて、ガソリン、灯油の急激な値上がりに対する備えとして、激変緩和事業を行う体制を構築いたします。また、灯油購入費の助成など、地方公共団体が行う原油価格高騰対策に要する経費に対し、特別交付税措置を講ずることとしております。
 こうした対策により、国民の皆様にスピーディーに、かつ混乱なく効果が行き渡ると考えております。

(人口減少)

 人口減少についての認識と今後の展望についてお尋ねがありました。
 二〇一七年に公表された日本の将来推計人口の中位推計によると、二〇六五年の日本人人口は、二〇二〇年に比べて三二%減少する見通しとなっています。
 このような人口減少の局面では、社会の担い手となる人材の量的な拡大と質的な向上、これが必要となります。そのため、スキルの向上、再教育の充実、副業の活用など、人への投資の抜本的強化を進めるとともに、全世代型社会保障構築会議において、女性の就労の制約となっている制度の見直しや家庭介護の負担軽減などに取り組み、男女が希望どおり働ける社会を目指してまいります。
 加えて、長い目で見れば少子化対策が大きな鍵であり、少子化対策、そして子供対策、これらをしっかり進めてまいりたいと考えます。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。

林芳正・外務大臣の答弁

 水岡先生からは、在日米軍の新型コロナ感染についてお尋ねがありました。

( 在日米軍基地でのコロナ感染問題 )

 十九日午後時点で判明しております全国の在日米軍施設・区域における現存感染者数は六千三百五十名と承知しております。そのうち、在沖米軍全体では現存感染者数は四千百四十一名と承知しております。
 米側からは、出国前の検査については以前は実施していたが、米軍のワクチン接種が進んだことや世界的な感染状況の緩和を受け、全世界を対象とした米国防省の方針に基づき、在日米軍は昨年九月三日にワクチン接種者については出国前検査を免除したとの説明を受けております。
 日本側からの強い申入れも踏まえ、在日米軍は昨年十二月以降、出国前検査を改めて導入し、現在では在日米軍関係者に対する出国前及び入国時検査を取っております。
 政府としては、岸田総理の指示を踏まえ、在日米軍の駐留に関わる保健衛生上の課題に関し、日米地位協定に基づく日米合同委員会において、感染拡大の防止及び地元の方々の不安解消に向けて日米間での連携をより一層強化をしてまいります。