「政治とカネ」醜聞でスネに傷持つ岸田政権、疑惑の10人

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4日に組閣された岸田内閣は、20人の閣僚のうち13人が初入閣した。「知らない人が多い」との声もあり地味な顔ぶれとなったが、実は過去の疑惑や醜聞がウヤムヤになったままの人物も多い。ある自民党議員秘書が「岸田氏も総裁選に勝ってすぐに決めなきゃいけなかったから、身体検査する時間もなかっただろう」と言うとおり、今後「政治とカネ」の問題が岸田政権の“アキレス腱”となる可能性もある。

甘利明・自民党幹事長

筆頭は、何といっても自民党幹事長の甘利明氏(72)だろう。2016年、自身や当時の秘書が都市再生機構(UR)と補償交渉をしていた建設業者から現金や接待で1200万円を受け取ったとされる週刊文春の報道は、いまだ火種がくすぶっている。元秘書らと甘利氏はあっせん利得処罰法違反と政治資金規正法違反の疑いで刑事告発されたが、東京地検は嫌疑不十分で不起訴とした。甘利氏は16年、問題の責任をとって経済再生担当相を辞任したが、野党は改めて追及する構えだ。

甘利氏は1日の会見で、自らの関与を否定。「この事件に関して事情を全く知らされていない。寝耳に水だ」と述べた。5日の記者会見では「私としては説明責任を含めて責務を果たし終えたと考えている」と述べ、問題の幕引きを図ろうとしている。

だが、世論調査で岸田内閣の支持率が伸び悩んだ要因として、朝日新聞は「甘利氏の『政治とカネ』で支持率が10%は下がった」(閣僚経験者)と報じるなど、疑惑を抱える甘利氏が足を引っ張っているとの見方もある。野党は合同検証チームをつくり、今後も国会で説明を求める方針だ。

なお「週刊朝日」(16年2月12日号)も甘利氏が美術品転がしで約1400万円を得ていた疑惑や、支援者から「お車代」として10万円を受け取っていたとの証言、料亭で総額200万円もの接待を受けていた疑いなどを報じた。

萩生田光一・経済産業大臣

また週刊朝日では、文部科学相から経済産業相に横すべりした萩生田光一氏(58)の金銭問題も報じている。19年12月20日号で、地元の有権者を対象にグラウンドゴルフ大会、フットサル大会などのスポーツイベントを開催して、上位者に賞品を出し、収支の赤字分を補てんしていた問題を報じた。当時、萩生田事務所は「政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告している。ご質問の行事は当該政治団体の目的でもある懇親行事であり、参加者から相応の参加費を徴収し実施しているところであり,ご指摘は当たらない」と答えている。

鈴木俊一・財務大臣

麻生太郎副総裁から財務相を引き継いだ鈴木俊一氏(68)も、五輪担当相時代、資金管理団体が13年から15年に計上したガソリン代が地球33・8周分に相当する1412万円にものぼることを週刊新潮で報じられた。

小渕優子・自民党組織運動本部長

同じく週刊新潮は14年、今回自民党組織運動本部長となった小渕優子氏(47)の政治資金疑惑を報じた。後援会の観劇バスツアーで事務所負担があったのではという疑惑をきっかけに、地元有権者へのワインやカレンダーなどの配布が露呈。元秘書らの政治資金規正法違反事件として事務所に家宅捜索が入ると、パソコンのハードディスクが破壊されており、大胆な“疑惑隠し”も話題になった。

結局、第三者委員会の調査が入ることになったが、聞き取りに対して小渕氏は「経験豊富な秘書たちであり、安心して任せていた。全く知らなかった」と述べたという。なお、小渕氏自身も、政治資金で百貨店でベビー用品や化粧品、ブランド服などの支払いをしていたことも発覚した。

西銘恒三郎・内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)

沖縄担当相の西銘恒三郎(にしめ・こうさぶろう)氏(67)は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題に絡むスキャンダルを抱えている。

13年、しんぶん赤旗の報道で、辺野古移設関連工事の受注業者から計220万円の献金を受け取っていたことが発覚。さらには17年の衆院選期間中にも、辺野古移設の関連工事を受注した業者から献金を受けていたことを琉球新報などで報じられ、西銘氏の事務所は「誤解を与えないよう返金した」とコメントしていた。

また、今月7日には新たな不正支出も判明した。18年~19年にかけて東京・新橋の「ガールズスナック」に計11万6400円を政治活動費として支出していたと朝日新聞が報じた。朝日新聞の取材に対し、西銘氏の事務所は「場所をわきまえるべきだった。支出を削除して訂正する」と回答した。

後藤茂之・厚生労働大臣

コロナ対策の要を担う厚生労働相となった後藤茂之氏(65)もスネに傷がある。

09年の衆院選では、後藤氏の選挙の運動員が公職選挙法違反の疑いで長野県警に逮捕された。さらに、14年の衆院選でも後藤氏の後援会に所属する男性が、公選法違反容疑で逮捕されるなど選挙ではトラブルが続いた。

政治資金を巡っても、法務副大臣時代の13年5月、巨額年金資産消失事件を起こした企業の傘下の証券会社から、100万円以上の政治資金を受け取っていたことが問題視された。後藤氏は、この証券会社の代表から50万円の寄付を受け、資産運用のため同社株式を200株(額面で計1000万円)保有していたことも明らかになった。後藤氏は当時の朝日新聞の取材で、政治資金について「政治資金規正法にのっとり適正に届け出た。多くの被害者を出した会社なので返還することにした」と説明した。

金子原二郎・農林水産大臣

農林水産相に選ばれた金子原二郎氏(77)も政治献金絡みの疑惑があった。

13年、金子氏が自民党総務会長代理だった時、海上自衛隊のパソコンを地元業者から購入するように防衛省に圧力をかけ、地元業者らから合計240万円もの政治献金を受け取っていた疑惑が、しんぶん赤旗で報じられた。当時、赤旗の取材に対して金子氏の秘書は「(防衛省には)相談を受けた企業の名前は出さず、その後の経過報告も求めていない。圧力ではないと認識している」と述べた。

末松信介・文部科学大臣

文部科学相となった末松信介氏(65)は、教育行政のトップになる身でありながら、10年の参院選で出所不明の1157万円にのぼる巨額の寄付金を収支報告書に記載せず、16年に市民団体から政治資金規正法違反の疑いで刑事告発された過去がある。末松氏の事務所は、当時、日刊ゲンダイの取材に対して「1157万円は、末松本人が自己資金として支出した資金を誤って政党支部からの支出と記載した」と答えている。14年には政治資金でエルメスなど高級ブランド品を購入していたことが批判された。

堀内詔子・東京オリパラ担当/ワクチン接種推進担当

新内閣の目玉となった女性閣僚も例外ではない。

ワクチン担当相となった堀内詔子(のりこ)氏(55)は3回生ながら初入閣となった。詔子氏の夫は山梨県の富士急行社長の堀内光一郎氏。富士急グループはアミューズメントパークの富士急ハイランドなどでも知られる運輸、観光、不動産の一大グループだ。

それゆえ、記者が地元を取材すると「詔子さんは、地元の富士急グループの利益を守るために、議員として出ているようなもの」という厳しい意見もあった。山梨県とは県有地の賃貸借契約に関して長らく訴訟になっている。

そんな堀内氏は、14年の政治資金収支報告書に6万円の香典代が記載されていたことが判明。堀内氏の事務所は「本人が私費で払ったものを事務処理で誤って記載してしまった」として訂正した。また19年の政治資金収支報告書には、靖国神社に1万2000円の支払いが記載され、政治資金ではなく、私費で払うべきものだとの批判が出た。

牧島かれん・デジタル大臣/行政改革担当/内閣府特命担当大臣(規制改革)

またデジタル相に抜擢された牧島かれん氏(44)も、7日発売の「週刊文春」で19年~20年にかけて2回、NTTの秘書室長から1人5万円のコース料理で接待を受けていたと報じられた。牧島氏は週刊文春の取材に「会食は事実」としたうえで、「(飲食費を)支払った記憶はない。政治家としてさまざまな方と意見交換を行うことは重要で、問題ない」と回答した。

 ◇   ◇   ◇

岸田内閣の船出はどうなるのか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。

「岸田首相が誇った『老壮青』のメンバーは、いずれも『政治とカネ』にルーズだった人たちばかりだったということが、組閣3日目でわかってしまった。自民党執行部の役員人事で甘利明氏を幹事長、小渕優子氏を組織運動本部長に起用したのも、『政治とカネ』問題が再燃するのがわかっていたのに、わざわざ選んだ。

そんな顔ぶれになったのは安倍・菅内閣が『政治とカネ』の問題を解決せずに、中途半端にしてきたからです。岸田首相は人事でそこを正そうとしなかったわけです。

内閣支持率が低い(朝日新聞の世論調査では45%)スタートとなったのは、実態は相変わらず安倍・菅政権の延長線上にあると国民に思われたからではないか。今後は『政治とカネ』の問題で収拾がつかなくなる可能性もあります

岸田文雄首相は自らの内閣について「新時代共創内閣」と名付けたが、政治とカネの問題で「共倒れ内閣」にならなければよいのだが……。(AERA dot.編集部・上田耕司)

【転載元記事】

甘利幹事長だけじゃない 「政治とカネ」醜聞でスネに傷持つ岸田政権10人を総ざらい(AERAdot. 2021/10/08 08:00)