イギリスの製薬大手、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したアストラゼネカワクチンは、世界の70を超える国と地域で使われている。日本政府との間で6000万人分を供給する契約を結び、使用に向けた承認申請が行われている。
アストラゼネカ製ワクチン、接種後に血栓 しかし、利益はリスクを上回る
このワクチンを巡って、接種後に血の塊、「血栓」などが確認されたケースが報告され、ドイツやフランスなどヨーロッパ各国で予防的な措置として、一時、接種を見合わせるなどの動きが出た。
英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、2月末までに同ワクチンの接種者79人に血栓が起こり、うち19人が亡くなっていたことを明らかにしていた。ワクチンが血栓の原因となったことを示すものではないとしているものの、関連性は確実さを増しているという。
■ MHRAの調査では以下のことが明らかになった。
■ 2000万回分のワクチンが接種され、79人に血栓が発生し、うち19人が亡くなった。100万人に4人に血栓が起こり、100万人に1人が亡くなっている計算だ。
■ 血栓が発生した人の3分の2が女性だった。
■ 亡くなった人は年齢18~79歳で、3人が30歳未満だった。
全てのケースが1回目のワクチン接種後に起こっているが、まだ2回目を受けている人が少ないことから、この点については結論が導き出せていない。
欧州連合の欧州医薬品庁(EMA)は7日、アストラゼネカ製ワクチンの非常にまれな副作用として血栓を記載すべきだと述べた。一方で、利益がリスクを上回っているとした。
アストラゼネカ製ワクチン接種におけるヨーロッパ各国の対応
こうした調査結果を受けて、欧州各国は次の対応をしている。
■ イギリス政府は30歳未満に対しては別のワクチンの接種を勧めると発表した。
■ イタリアではアストラゼネカのワクチンについて接種を60歳以上に限ると発表した。ただ、1回目の接種を受けた人については60歳未満であっても2回目の接種を進める。
■ スペインでも60歳から65歳の人たちに限ると発表した。
■ フランスが55歳以上に、ドイツが60歳以上に接種を進める方針を明らかにした。
専門家の意見、「慎重に検討する必要がある」「年齢層や持病などを考慮して」
ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は、「因果関係があるのかは慎重に見なければいけないが、リスクはできるだけ避けるべきで、原因がはっきりするまでは接種の対象となる年齢を制限するといった各国の対応は妥当だと思う。今後、日本でも慎重に検討する必要があるだろう」と話した。
国立国際医療研究センターの忽那賢志医師は、「このワクチンを接種した際の効果と副反応のデメリットを天秤にかけた場合、ワクチンの効果の方が上回るのは間違いなく、接種をしない方がいいということではない。このワクチンの接種が国内でいつから始まるのかまだ見通しが立ってないので現時点では議論は難しいが、年齢層や持病などの条件を考慮しながらどういう人に接種していくのかを事前に考えていく必要があるのではないか」と指摘しました。
その上で、「ワクチン接種においては重要な副反応が出てきたときに一度立ち止まって考えるというプロセスも非常に重要だ。他のワクチンも含めてきちんと情報を得て検証し、接種に向けて準備を整えていく必要がある」と話した。
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