「中国が台湾を侵攻した場合、日米同盟の弱点見る」 日米交渉巡り米ランド研のホーナン氏(産経新聞 2025/5/22 18:47)
トランプ米政権の関税政策を巡る3回目の日米交渉が近く行われる見通しだ。日本は交渉をどう進め、日米同盟の発展と北東アジアの平和と安定に生かせばいいのか。米ランド研究所国家安全保障研究部のジェフリー・ホーナン日本部長が産経新聞のインタビューに応じ、米主導から多極化に向かう世界秩序を見すえた能動的な外交の展開を次のように訴えた。
安保絡めて来たら
日本の交渉の成否は他国にとり先例となる。最大の課題は、関税と安全保障問題が一緒になった場合の対応だ。別々に取り扱うのが日本のアプローチだが、トランプ政権が2つを絡めた場合の戦略が日本に迫られる。
誰にもトランプ氏の関税政策の目的は分からない。自由貿易ではなく公正貿易だといい、他国が米国を扱うように米国も他国を扱うと訴える。だが、今米国に工場を造れば、その次は何が起きるのか。政策には予測可能性が乏しい。
トランプ氏は日本のことが好きで、第一級の盟友であるのは確かだ。国防総省がコルビー次官を中心にいずれ取りまとめる対中国戦略を見れば、対日観のさらなる理解につながるだろう。中国抑止で日本は軍事と経済両面で主要な役目を担うはずだ。
特に台湾有事では、日本は関与する以外選択肢がないというのが米国の通説だ。日本が台湾を防衛するという見方は誤りだが、日本には台湾を守る米軍を守り、決断に時間を費やすことなく即座に対処することが期待される。日本は前線に立ち、自分たちの戦いでもあるということだ。
受け身は駄目
不確実なことは多々ある。例えば中国が台湾に侵攻して米国が軍事介入し、中国が日本を攻撃しない場合、日本は中国からの報復を覚悟して米軍に日本の基地を使わせるか否かの決断が迫られる。同盟を生かすか殺すかの悪夢のシナリオだ。この同盟の弱点を中国はよく見ている。
第二次大戦後、米国が構築したルールに基づく世界秩序は多極化に向かっている。こうした中で、米国は日本を守ると約束した唯一の国だ。オーストラリアとは違う。日本は米国の真の友人として何をすべきか。米国の後退で生じた真空が中国に埋められないよう、日本は各国・地域への開発援助などを肩代わりできる。安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の実現も、トランプ氏がそれに逆行する関税政策を取る中、日本には新たな発想が求められる。
ショックに受け身な姿勢では駄目だ。情勢を先読みして行動する。米国の言いなりになるのではなく、同意できない行動には躊躇せずにモノをいうことが真の友人関係ではないか。
(聞き手 渡辺浩生)