<社説>規正法与党案/改革の本気度が疑われる…神戸新聞

記者会見する茂木幹事長(中央)ら 政治・経済

<社説>規正法与党案/改革の本気度が疑われる(神戸新聞 2024/5/14 06:00)

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民、公明両党は政治資金規正法改正に向けた与党案に大筋合意した。

パーティー券購入者の公開基準額は現行の「20万円超」から引き下げるとしたものの、金額は示していない。政党から政治家個人に支出され、使途の公開義務がない政策活動費も、公開へ方針転換したが、範囲や方法の具体化は先送りした。

野党が禁止を求める企業・団体献金のあり方には触れてもいない。あまりに中途半端な内容で、改革への本気度が疑われる。

際立つのは「政治とカネ」の透明化に消極的な自民の姿勢である。4月の衆院3補選で全敗した要因の一つが裏金事件であったにもかかわらず、政治不信を増大させたことの自覚と反省が全く感じられない。

透明性強化を求める公明との溝も埋まっていない。公明も安易な妥協をすれば存在意義が問われよう。

パーティー券の公開基準額の引き下げについては、公明が「5万円超」を主張した。一方、自民は資金集めへの影響を懸念して「10万円超」で譲らず、折り合えなかった。与党案では公開基準を「改正法案に盛り込む」とするにとどまった。

なぜ個人献金並みの5万円超で公開できないのか理屈が通らない。企業・団体献金の抜け道となっている政治資金パーティーは、野党が主張するように禁止を含め開催自体を見直すのが筋ではないか。

政策活動費は支出先が不透明で「ブラックボックス」と批判されてきた。与党案は、政党から支払いを受けた議員が使途を報告し、党が政治資金収支報告書に記載するとした。だが自民が唱える項目別の総額記載では、国民が支出の妥当性を判断するのは難しいだろう。

政治家の厳罰化では、会計責任者が処罰された際に議員本人も責任を負う「連座制」が焦点となった。与党案は収支報告書に議員の「確認書」添付を義務付けるのみで、責任を逃れる余地は残る。使途の公開基準が緩い後援会などに巨額の政治資金を移す問題では、1千万円以上の寄付を受けた場合に限り公開とするが、これも抜け道になりかねない。

岸田文雄首相は今国会での規正法改正を明言している。与党案を押し通せば、国民の信頼回復は遠のくばかりだ。抜本改革を唱えるなら、野党案を全面的に取り入れる覚悟で国会審議に臨むべきだ。

安倍派の裏金事件では、規正法違反の罪で会計責任者の公判が始まった。検察は裏金作りの発端などに触れずに立証するとみられるが、国民が期待する真相究明には程遠い。核心に切り込んでもらいたい。