夫婦別姓に反対する50人の自民党議員、地方議会に圧力

夫婦 政治・経済

丸川珠代五輪担当相が自民党の保守系国会議員有志とともに、選択的夫婦別姓の実現を求める意見書採択を阻止するよう文書で地方議員に呼び掛けたことが分かり、反発を招いている。ジェンダー平等は五輪の理念の一つで、丸川氏は男女共同参画担当相も務める。適格性を問う声は党派を超えて広がりを見せる。

文書は1月30日付で、丸川氏のほか高市早苗前総務相や古屋圭司元国家公安委員長ら衆参50人の連名。別姓導入により「家族単位の社会制度の崩壊を招く」などと指摘している。関係者によると、都道府県議会議長のうち自民党系の約40人に送られた。

地方議員からは、「不当な圧力」として反発が出ている。

文書全文

厳寒のみぎり、先生におかれましては、ご多用の日々をお過ごしのことと存じます。貴議会を代表されてのご活躍に敬意を表し、深く感謝申し上げます。

本日はお願いの段があり、取り急ぎ、自由民主党所属国会議員有志の連名にて、書状を差し上げることと致しました。

昨年来、一部の地方議会で、立憲民主党や共産党の議員の働き掛けにより「選択的夫婦別氏制度の実現を求める意見書」の採択が検討されている旨、仄聞しております。

先生におかれましては、議会において同様の意見書が採択されることのないよう、格別のご高配を賜りたく、お願い申し上げます。

私達は、下記の理由から、「選択的夫婦別氏制度」の創設には反対しております。

①戸籍上の「夫婦親子別氏」(ファミリー・ネームの喪失)を認めることによって、家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある。

②これまで民法が守ってきた「子の氏の安定性」が損なわれる可能性がある。

※同氏夫婦の子は出生と同時に氏が決まるが、別氏夫婦の子は「両親が子の氏を取り合って、協議が調わない場合」「出生時に夫婦が別居状態で、協議ができない場合」など、戸籍法第49条に規定する14日以内の出生届提出ができないケースが想定される。

※民主党政権時に提出された議員立法案(民主党案・参法第20号)では、「子の氏は、出生時に父母の協議で決める」「協議が調わない時は、家庭裁判所が定める」「成年の別氏夫婦の子は、家庭裁判所の許可を得て氏を変更できる」旨が規定されていた。

③法改正により、「同氏夫婦」「別氏夫婦」「通称使用夫婦」の3種類の夫婦が出現することから、第三者は神経質にならざるを得ない。

※前年まで同氏だった夫婦が「経過措置」を利用して別氏になっている可能性があり、子が両親どちらの氏を名乗っているかも不明であり、企業や個人からの送付物宛名や冠婚葬祭時などに個別の確認が必要。

④夫婦別氏推進論者が「戸籍廃止論」を主張しているが、戸籍制度に立脚する多数の法律や年金・福祉・保険制度等について、見直しが必要となる。

※例えば、「遺産相続」「配偶者控除」「児童扶養手当(母子家庭)」「特別児童扶養手当(障害児童)」「母子寡婦福祉資金貸付(母子・寡婦)」の手続にも、公証力が明確である戸籍抄本・謄本が活用されている。

⑤既に殆どの専門資格(士業・師業)で婚姻前の氏の通称使用や資格証明書への併記が認められており、マイナンバーカード、パスポート、免許証、住民票、印鑑証明についても戸籍名と婚姻前の氏の併記が認められている。
選択的夫婦別氏制度の導入は、家族の在り方に深く関わり、『戸籍法』『民法』の改正を要し、子への影響を心配する国民が多い。
国民の意見が分かれる現状では、「夫婦親子同氏の戸籍制度を堅持」しつつ、「婚姻前の氏の通称使用を周知・拡大」していくことが現実的だと考える。

※参考:2017年内閣府世論調査(最新)
夫婦の名字が違うと、「子供にとって好ましくない影響があると思う」=62.6%

以上、貴議会の自由民主党所属議員の先生方にも私達の問題意識をお伝えいただき、慎重なご検討を賜れましたら、幸甚に存じます。

先生のご健康と益々のご活躍を祈念申し上げつつ、お願いまで、失礼致します。

令和3年1月30日

50人の自民党国会議員

衆議院議員(50音順)

青山周平
安藤 裕
石川昭政
上野宏史
鬼木誠
金子恭之
神山佐市
亀岡偉民
城内実
黄川田仁志
斎藤洋明
櫻田義孝
杉田水脈
鈴木淳司
高市早苗
高木啓
高鳥修一
土井亨
中村裕之
長尾敬
深澤陽一
藤原崇
古屋圭司
穂坂泰
星野剛士
細田健一
堀井学
三谷英弘
三ツ林裕巳
宮澤博行
簗和生
山本拓

参議院議員(50音順)

赤池誠章
有村治子
磯崎仁彦
岩井茂樹
上野通子
衛藤晟一
加田裕之
片山さつき
北村経夫
島村大
高橋克法
堂故茂
中西哲
西田昌司
丸川珠代・・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)兼国務大臣(東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当)
森屋宏
山田宏
山谷えり子