ゼレンスキー大統領がインド首相と握手すれば「ロシアには衝撃」 広島G7は「転換点になる」と中村逸郎氏

ゼレンスキー大統領がインド首相と握手すれば「ロシアには衝撃」 広島G7は「転換点になる」と中村逸郎氏 国際

ゼレンスキー大統領がインド首相と握手すれば「ロシアには衝撃」 広島G7は「転換点になる」と中村逸郎氏(関西テレビ 05月21日 01:18)

ゼレンスキー大統領はすでに広島にいる!?

ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃来日し、G7サミットに参加するという情報が入ってきました。電撃来日の狙いは何なのか、そしてこの来日がロシアどんな影響を与えるのか? ロシア事情に精通している筑波大学の中村逸郎名誉教授に詳しく聞きます。

ゼレンスキー大統領は、21日の会合に参加するとみられるという状況ですが、本当に日本に来るのでしょうか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「実はゼレンスキー大統領はすでに日本に到着し、広島に入っているのではないか…と私は思っています。と言いますのも、今から出発するとなるとプーチン政権は絶対に阻止したいと思うので、安全保障上やはり(日本に)着いた時点で『日本に行く』と発表する流れになると思うんですよね。ゼレンスキー大統領はすでに広島に入り、G7各国の首脳と意見交換をしているのではないかと考えられます」

当然リスクも大きいと思うが、そこまでしてゼレンスキー大統領が対面でサミットに参加するのは、どんな狙いがあるんでしょうか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「欧米諸国の中でもウクライナ支援をめぐり、国内世論もあって様々な意見が出ているんです。そんな中で今回、G7参加国と直接会ってウクライナ支援で結束を固め、軍事支援を引き出して、ロシア包囲網を作りたいところに大きな狙いがあると思います」

京都大学大学院 藤井聡教授にも聞きます。ゼレンスキー大統領の来日で今回のサミットが、さらに世界の注目を集めそうですね。

【京都大学大学院 藤井聡教授】
「そうですね。G7というのは日本以外はNATOの国々ということなんです。NATOは間接的にロシアと戦っているとみなされる国々。ところが日本にゼレンスキー大統領がやってくるということは、これまで日本とNATOは一定の距離があった中で、その距離が事実上ほぼなくなるということになります。ロシアにとって日本が事実上の敵国であることが確定するという政治的な意味を持つことを、日本人は認識しておく必要があります」

そんな中、19日もウクライナではロシアによる攻撃が続いています。首都キーウのほか、南部オデーサでもミサイル攻撃があり1人が死亡しました。ウクライナではほぼ全土で空襲警報が発令されていてウクライナ軍によると、18日にかけて、ロシアがミサイル30発を発射しそのうち29発を撃墜したということです。

首都キーウなども攻撃されていて厳しい状況は今も続いているんですね。

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「非常に激しい攻撃を受けています。私の知人がキーウに住んでいるのですが、深夜に爆音が響いたという話が入ってきています。キーウの上空で行われている戦争は事実上、アメリカとロシアの戦いです。超音速の最新兵器でロシアは攻撃し、それに対してアメリカはパトリオットで迎撃している。事実上、アメリカとロシアの軍事衝突が始まっていると認識しています」

インド首相のG7参加には大きな意味が…

そもそも、対ロシアについてG7がどれだけ結束していけるかという中で、ロシアのプーチン大統領は、このG7サミットをどうみているんでしょうか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「モスクワに住んでいる友人でプーチン政権に近い人がいるのですが、彼に聞いたところ、今回のG7にゼレンスキー大統領が参加するというのは、プーチン政権にとっては『デッドラインを超えることを意味する』ということでした。プーチン政権にとって追い込まれる情勢になっているということでした」

また、今回のG7で中村名誉教授が特に注目しているのが、インドのモディ首相が参加するという点です。

ちなみに今回のG7には、ブラジルやインドネシアなどグローバルサウスと呼ばれる新興国が招待されています。その中にインドも含まれます。

中村先生、グローバルサウスというのはどういった国なんでしょうか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「国際政治の中で民主主義対専制主義という色分けがある中で、インドやトルコ、ブラジルなど人口が急増して経済も発展させている国を総称してグローバルサウスと呼んでいるわけです」

そのグローバルサウスのひとつインドは、ロシアとの経済的なつながりが深く、これまではインドは中立の立場だったということですね。

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「グローバルサウスの中でもインドは代表格なんですが、ロシアと非常に深い関係があります。ロシアとインドはソ連時代からの友好国で、プーチン政権になってもロシアの最大の武器輸出国のインドです。あと、ブラジルについては作物を作る肥料を輸入していたり、アフリカに対してはエジプトを通して小麦が輸出されています。ロシアにとってグローバルサウスというのは自分の味方だと思っているはずです」

そんなインドとロシアの関係性が、ゼレンスキー大統領が来日した場合、大きく変わる可能性もあるということです。

ゼレンスキー大統領とモディ首相が握手すれば”大きな転換点”に

あくまで可能性ですが、ゼレンスキー大統領とモディ首相が握手したとします。そうすると、G7が転換点となり戦争が次のステージに行くのではないかということなんですね?「核兵器」とか「内部崩壊」というキーワードがあります。この2人が握手をすることで、こんなにも状況が変わるんですか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「今回のG7の最大の焦点です。ゼレンスキー大統領とモディ首相が握手をするということは、プーチン政権においては、特にモディ首相の『最大の裏切り』を意味しています。なぜかと言うと今週発表されたロシアの統計局の発表によると、1~3月の貿易統計を見ると、ロシアとインドの貿易高は前年比で4.7倍に増えているんです。欧米からの厳しい経済制裁がある中で、インドは抜け穴としてロシアの経済を支えています。その国のモディ首相がゼレンスキー大統領と握手をするということは、ロシアが抜け穴として使っていたインドがその穴をふさいでくる。だから2人が握手すること自体が大きな衝撃になります。

(Q.握手をする可能性はあるのでしょうか?)

私は握手をするために両者はG7に参加するのだと思います。オンラインでは握手ができませんよね」

一方で、ゼレンスキー大統領と握手することはインドにとってメリットはあるのでしょうか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「インドのモディ首相にも思惑はあります。プーチン政権を抑え込むことによって、グローバルサウスの中でインドが代表格であり、その先にG7に正式な加盟国として参加していきたい、そのデビューにしたい、今回のG7をそういう場にしたいという思惑があります」

インドとしても世界的に存在感を高める一つのきっかけになる訳ですね。

【関西テレビ 神崎博解説デスク】
「インドはバランスを重視する国で、これまでどこの軍事同盟にも入っていません。アメリカともロシアとも組んでいません。経済的には関係はあっても、軍事的には中立というのが、一つのポイントだったんです。今回ウクライナを支援する、つまりG7側にインドが歩み寄るということになるとそのバランスが崩れます。インドとしては、自分たちが一番得する方法を取るのが今までのインドの外交だったので、果たして今回ゼレンスキー大統領と個別に会ったとしても、本当にウクライナに協力するかどうかは不透明だと思います」

インドを巻き込んだロシアの包囲網づくり構築が岸田首相の大きな役割

ここで、LINEで寄せられた質問です。

Q.ゼレンスキー大統領が広島に来る間、ウクライナ国内は大丈夫?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「ギリギリの判断だったと思います。今パトリオットが一部損傷しているとのことですが、ロシアの攻撃には耐えられるという判断での来日だと思います。それともう一つ、ロシア国内で、プーチン大統領が内部分裂で孤立してきているので、大規模な攻撃はこれ以上もうできないのではないか。そういうことを踏まえての来日ではないかと。ロシア国内の反プーチン勢力は、かなり力を伸ばしていると考えられます」

Q.ゼレンスキー大統領が協力を仰いだ場合、岸田首相はどんな判断をしますか?

【筑波大学 中村逸郎名誉教授】
「岸田首相にとって大切なのは、インドを巻き込んだロシアの包囲網づくりを構築するというところで、そこに今回のG7の最大な狙いがあると思います。インドをG7側に振り向かせるところで、岸田首相の大きな政治的な判断があると思います。

ロシアから見ると、岸田首相のG7の舞台づくりは、ロシアにとって日本はもはや友好国ではなく、敵国と見なすいう話が出てきています。今回のG7サミットは、戦争の大きな転換点になるでしょうけど、日本の外交政策にとっても大きな転換点になると思います」

ウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応について、”対ロシア”でG7は結束の力を打ち出せるのか。ゼレンスキー大統領の来日、そしてインドのモディ首相と握手を交わすのかどうか…注目したいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」5月19日放送)