10月も続く値上げ、食品など6500品目 家計を「1世帯年間8万円」圧迫 制度改正で負担増も(東京新聞 2022年10月1日 06時00分)
今年に入り続いている食品の値上げは、10月に年内最大のヤマ場を迎える。帝国データバンクによると、今月は再値上げも含め6500品目以上が予定され、今年の累計約2万品目超のうち、3割以上を占める。今月はさらに、雇用保険料の引き上げや、後期高齢者の医療費の窓口負担の増加といった家計を圧迫する制度変更が相次ぐ。家計にとって厳しさは増すばかり。賃上げの実感が乏しい中、節約志向を強めざるを得ない状況だ。(並木智子、井上峻輔、渥美龍太)
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季節の変わり目、各社一斉に
今月、値上げが集中した背景には、年度後半に入るタイミングで取引先などとの調整がしやすかったことや、ビールのような季節で需要が高まる商品にとって「合間」の時機で、各社が踏み切りやすかったことなどがあるとみられる。
ダイドードリンコは、コーヒーなど69品目を9〜25%引き上げ。輸入品のコーヒー豆などが高騰しているためで、広報担当者は「秋冬商品が出るタイミングに合わせた」と話す。
日本ハムはハムやソーセージなどを平均9%値上げした。同社は2月に続いて今年2回目の値上げ。「海外調達の豚肉、牛肉、鶏肉が高騰している」(広報)という。伊藤ハムの広報担当者は、急速な円安で「輸入原料は厳しい状況が続きそう」と見通す。
帝国データバンクの担当者は、11月以降の態度を明らかにしていない企業が多いとする。円安に加え、電気料金や燃料費なども高止まりする中、「(値上げが)収まっていくとまだ言える状況にない」と話す。
1世帯あたり年間8万円超の負担増
食料品などの値上げが止まらない中で、家計の負担感が大きくなってきている。民間調査会社の試算では資源高や円安などを要因とした値上げによる家計の負担増は1世帯あたり年間8万円超に上る。
みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、1ドル=145円の円安が9月以降続いた場合、2022年度の値上げによる家計の負担増は前年度に比べ1世帯(2人以上)あたり、政府の物価高対策を織り込んでも年8万1674円になるとの結果だった。
内訳は、年間で食料が3万9030円、電気やガソリン代などのエネルギーが3万3893円、家具や家事用品が8751円。年収別では、「300万円未満」が年6万2765円増、日本の平均給与461万円の層が該当する「400万〜500万円」では年7万8051円増などとまとめている。
同社の酒井才介氏は「円安などの影響で輸入物価が高騰し、家計への負担は相当大きいものになっている。消費者の節約志向はいっそう強まるだろう」と話す。
一方、帝国データバンクも年内に予定される食品の値上げによる家計への影響を試算。家計の負担額は月額平均5730円、年間6万8760円増えるとしている。
高齢者の医療費も負担増に
10月からは、暮らしに関わる制度も変わった。
75歳以上の後期高齢者はこれまで原則1割だった医療費の窓口負担が、一定の収入がある人は2割に。支払い能力に応じて負担してもらうというのが政府の考えで、対象者は単身なら年収200万円以上、2人以上の世帯なら年収320万円以上が目安となる。
子育て支援では、児童手当の所得制限が見直され、一部の高所得世帯は月額5000円の特例給付を受け取れなくなった。収入の線引きは家族構成などで異なるが、配偶者を扶養し、子どもが2人の世帯なら、夫婦いずれかの年収がおおむね1200万円以上で対象外となる。
過去最高の前年度比31円増となった最低賃金は都道府県ごとに順次改定され、全国平均は961円になる。ただ、給料から引かれる雇用保険料の料率も0.2ポイント上がる。