家庭連合「解散命令」に異議 参院選出馬表明 日本の家庭を守る会 小笠原 裕氏(世界日報 2025年6月28日 06時24分)
信者の声を国政に
おがさわら・ひろし 1963年広島県生まれ。88年東京大学経済学部卒。同大在学中に家庭連合の教義を学ぶ。卒業後は総合商社に入社し、国内外で勤務。2020年、退職。千葉県で中小企業診断士として独立開業。24年1月、「信教の自由と人権を守る千葉県民の会」を発足、代表となる。同年夏、政治団体「日本の家庭を守る会」を設立。25年6月、参院選出馬表明。
中小企業診断士の小笠原裕氏(62、千葉県八千代市在住)は世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の現役信者だ。今月2日に千葉市内で記者会見を開き、自身の立ち上げた政治団体「日本の家庭を守る会」から参院選千葉選挙区で出馬することを表明した。政府による教団への解散命令請求は信教の自由を侵害する「違憲」と訴える小笠原氏に話を聞いた。(石井孝秀)
立候補表明の経緯は。
私は昨年からずっと、信教の自由をテーマに県内でシンポジウムを開くなど活動を広げていたが、国政政党がそろって教団との関係断絶を一方的に宣言するなど、信者の声を国政に届けることができない現状に強い危機感を感じていた。
ならば信者自ら国政選挙に立候補するほかないと考え、教団からの支援や指示は受けず、個人の判断で出馬を決意した。日本の家庭を守る会は昨年夏に立ち上げたが、既に会員は160人超で、教団信者以外の会員も大勢いる。
政治資金は自分の持ち出しとカンパで賄い、その収支と支出もネット上で公開している。解散命令の争われている今だからこそ、立候補して解散に異を唱える意義は大きいと考えている。
選挙戦の戦略は。
正直、ハードルはかなり高い。知名度がないので、まずは顔を知ってもらうのが大切だ。ポスターや街頭演説だけでなく、ユーチューブチャンネルでの情報発信にも力を入れていく。
有権者の中には、東京地裁が3月に出した解散命令決定に対して危機感を抱いている宗教家もいるはずだ。休眠状態の宗教団体はどんどん解散しろという意見も出てきており、「宗教は怪しいものだから、すべてつぶせ」という宗教弾圧の傾向が強まる懸念もある。家庭連合信者が国政選挙に立候補することで宗教層に呼び掛け、少しでもこの問題の議論の活性化につなげていきたい。
また、家庭や地域文化を重んじることは国の力を育むというのが「日本の家庭を守る会」の考えだ。具体的には憲法を改正して家庭保護条項を追加するほか、祭りなど地域の結束を高める伝統文化の保護、女性スペースへの侵入など行き過ぎたLGBT施策の是正なども重視していく。
今回の千葉選挙区は候補者も多く、票がさまざまな陣営に分散する可能性がある。その中で家庭重視の主張は日本の家庭を守る会だけなので、差別化要素になると思う。
教団の解散命令請求に抗議して信者が街頭演説や、ラリーを行うことが全国的に増えている。
「家庭連合は反社組織」というイメージが先行し、どんな人たちが所属しているのか世間からは見えていない。そのような状態で、「教団がなくなってしまえば、どれだけの信者が困るか」ということへの共感が得づらい。そういう意味では街頭に顔を出して、メッセージを発信し続けることは大切だ。
ただ、「伝える」と「伝わる」は違う。自分の主張だけを訴えるのでなく、どうやったら相手に言葉が届くだろうかと考えながら話す必要がある。世間から理解されるのはなかなか大変だが、熱意はいつか伝わると信じて、発信し続けるべきだと思う。
選挙期間中になるが、安倍晋三元首相の事件から3年の7月8日の予定は。
襲われた11時半に黙とうを捧(ささ)げるなど、街頭で安倍元首相の追悼演説を行うことを計画している。あれだけ日本のために貢献した方が「ずぶずぶ」という言葉で貶(おとし)められている現状には耐え難いものがある。自民候補ですら、恐らく追悼集会のようなことはしないだろう。日本の家庭を守る会だけでも実施したい。
そもそも自民党や立憲民主党などは、家庭連合と安倍元首相を「悪者」にして、自分たちの知名度や評価を上げるために政治利用しているのが見え見えだった。結果的に両方とも支持率は伸びていないわけだが、それだけ見ても50年後100年後の日本を考えた政治家がいないことがよく分かる。
安倍元首相の事件を家庭連合の問題にすり替え、暴力を否定するどころか犯人に同情する空気すらつくられてしまった。選挙期間中に人の命を狙うような事件を糾弾できない社会は、絶対に許されてはいけない。それは何度でも叫びたい。