<社説>「巨大地震注意」/命を守る備えの再確認を…神戸新聞

巨大地震はおおむね100〜150年間隔で起きている 社会

<社説>「巨大地震注意」/命を守る備えの再確認を(神戸新聞 2024/8/10 06:00)

8日午後4時43分ごろ、宮崎県沖の日向灘で起きたマグニチュード(M)7・1の地震では、最大震度6弱が観測され、家屋倒壊や負傷者が出ている。震源地は南海トラフ巨大地震の想定震源域内で、気象庁はM8~9級の地震の発生可能性が通常より高まったとして「巨大地震注意」の臨時情報を発表した。

「注意」の対象は兵庫を含む29都府県707市町村に及ぶ。気象庁は今後、M8以上の地震が起きる可能性は「数百回に1回」程度としているが、評価検討会の平田直(なおし)会長は「現時点でどことは言えない。1週間は注意を続けてほしい」と述べた。冷静な行動を心がけつつ、命を守るために家具固定や、津波からの避難場所、避難経路の確認などの備えを怠らないようにしたい。

南海トラフ地震は30年以内に70~80%の確率で起きると想定される。大津波が発生し、死者は最悪で30万人以上、兵庫県内でも約2万9千人が亡くなると政府は推計する。

臨時情報は、東海から九州の太平洋沖にかけて広がる南海トラフ想定震源域でM6・8以上の地震や異常な地殻変動が観測された場合、その後に来る巨大地震に備えるために出される。8日に日向灘で起きた地震は条件に該当し、2019年の運用開始後初めての発表となった。

臨時情報には「調査中」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」「調査終了」の4種類がある。今回を上回るM8以上の地震が起きた場合は最も危険度が高い「警戒」が出され、震源域沿いの住民はすぐに避難できる準備をする必要がある。地震発生後では避難が間に合わない恐れのある高齢者らを対象に、1週間程度の事前避難を求める自治体もある。

ただ、この仕組みは複雑で国民に理解されているとは言い難い。内閣府の昨年の全国調査で、臨時情報の認知度は3割弱にとどまり、周知は進んでいない。実効性を高めるには、国や自治体が丁寧な説明と情報発信に努めることが欠かせない。

注意したいのは、1週間が経過した後、巨大地震発生の可能性が低くなるわけではない点だ。南海トラフ震源域では100~150年周期で地震が発生し、直近の昭和南海地震からは約80年が経過している。残念ながら地震は現在の科学では予知できない。いつでも不意に襲ってくると思っておく必要がある。

来年で発生30年となる阪神・淡路大震災以降、日本列島全域が地震の活動期に入ったとされる。政府や自治体は災害対応や復旧対策などの点検を急がねばならない。家庭や地域でも住宅の耐震化や食料備蓄の確認など被害を最小限にとどめる防災、減災対策を重ね、備えるしかない。