マイナカードのあり得ない“欠陥”システム!「なりすまし防止」どころか「誰でも顔認証」の大問題(日刊ゲンダイ 公開日:2023/06/23 06:00 更新日:2023/06/23 06:00)
「新型コロナウイルス対応並みの臨戦態勢で、国民の信頼を一日も早く回復するべく全力を尽くしてほしい」──。
岸田首相は21日、マイナンバーに関する省庁横断の情報総点検本部を設置。その初会合でハッパをかけたが、拙速なマイナカード普及がトラブルを招いているのに、何が「臨戦態勢」だ。信頼回復を目指すなら、まずは来年秋に現行の保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する方針を撤回したらどうか。
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総点検の対象は、マイナ保険証なども含め、マイナンバーと紐付けられた全29項目に及ぶ。岸田首相は秋までの点検完了を関係省庁に命じたが、実はマイナ保険証の“存在意義”が揺らぐ重大問題が発生している。
全国保険医団体連合会(保団連)が21日、マイナ保険証をめぐるトラブルについて会見。マイナ保険証のオンライン資格確認システムを導入した医療機関の65%が、保険証を読み取れないなどのトラブルを経験したとの調査結果を発表した。
マイナ保険証をカードリーダーにかざした際、「無効・該当資格なし」と表示されたり、ICチップの破損などの不具合によってマイナ保険証を読み取りできなかったり、トラブルの内容はさまざま。なかでも大問題なのがナント「誰でも顔認証」できてしまうあり得ないトラブルだ。
保団連の竹田智雄副会長は会見で、マイナ保険証をカードリーダーで読み込んで本人確認をする際に「他人の顔認証でも認証できるケースが複数報告されている」と指摘。実際、千葉県保険医協会によれば、「ある医療機関がオンライン資格確認を導入するにあたり、スタッフ同士で顔認証を試したところ、マイナカードの所有者本人ではない人が認証されてしまった」(事務局)という。
そもそも、マイナ保険証を使ったオンライン資格確認の導入は、健康保険証のなりすまし利用防止が理由のひとつ。受付スタッフがマイナカードの写真と本人の顔を照らし合わせる手間を省くことで、受付業務の負担軽減にもつながるとの触れ込みだった。
「政府は実際に何が問題なのか把握して」
ところが、実態は他人でも顔認証されてしまうユルユル過ぎるシステム。オンライン資格確認を導入している天台歯科医院(千葉市)の石毛清雄院長がこう指摘する。
「本人確認は、カードに記憶されている本人の顔と、カードリーダーに映した顔とを機械が照合する形で行われます。私のマイナカードをカードリーダーに読み込み、試しに女性の顔で顔認証したところ、結果的に認証されてしまいました。カードに入っている顔と、カードリーダーに映した顔が不一致のため暗証番号の入力画面に遷移するのですが、顔が違っていても、暗証番号を入力すれば認証されてしまった。これでは、わざわざ顔認証を導入している意味がありませんし、なりすまし防止に役立ちません。暗証番号を共有すればいいわけですからね」
ポンコツなうえ、逆に医療機関の業務負担になりかねない。
「受診者の多くは高齢者。カードリーダーに顔を映しながら、画面の操作をするだけでも一苦労です。当医院では健康保険証の持参をお願いしていますので、トラブルがあってもすぐ対応できますが、カードリーダーだけで認証している医療機関では本人確認の操作に手間取って長蛇の列ができてしまった、なんてことになりかねません。患者さんには、『練習としてウチで使ってみたら』と呼びかけていますが、なぜ受診者や医療現場が苦労を強いられなければならないのか。政府には、きちんと現場に寄り添い、実際に何が問題なのか把握してもらいたいです」(石毛院長)
なりすましを防止できない欠陥システムでも、岸田首相はマイナ保険証への全面移行を止めない。今こそ、ご自慢の「聞く力」を発揮すべき時じゃないか。