「短期決戦」失敗のロシア、どう動く 欧米が想定するシナリオ ウクライナ侵攻2カ月(東京新聞 2022年4月24日 06時00分)
ロシア軍のウクライナ侵攻から24日で2カ月になる。ロシアのプーチン大統領が描いた「短期決戦」のもくろみは外れ、ウクライナ東部と南部では戦闘が長期化する様相だ。ロシアによる大量破壊兵器投入を含め、欧米各国は複数のシナリオを想定し、対応策を練っている。
戦果求め「制圧」地域で軍事パレードか
プーチン氏が重要な節目とするのが5月9日の「対独戦勝記念日」だ。「ナチス・ドイツから欧州を救った」と強調し、大規模な軍事パレードで国威発揚を図ってきた。プーチン氏は「ネオナチ的なウクライナ政府からロシア系住民を解放する」と主張して侵攻を始めており、何らかの戦果が求められる。今年は「制圧」を宣言した要衝マリウポリでも軍事パレードを実施する可能性がある。
ウクライナ国防省によると、ロシア軍は占領した南部ヘルソン州で4月27日に自称「ヘルソン人民共和国」樹立に向けた住民投票を実施するとされる。既に占領した地域では高齢者にロシア通貨ルーブルで年金を支給、学校ではロシア語教育を強要する。
2014年から親ロシア派武装勢力が支配する自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」が併合される可能性もある。
戦闘長期化、泥沼の恐れ
ロシアの主権侵害に対しウクライナは米欧の支援を受け反撃を継続。CNNによると、ブリンケン米国務長官は欧州の同盟国に「戦闘は年末まで続く可能性がある」と伝えたという。
ウクライナ大統領府顧問アレストビッチ氏は、プーチン政権の最長期限を念頭に、大規模な戦闘が数年おきに勃発し、35年前後まで続くことも予想。「イスラエルとアラブ諸国が争う中東情勢のようになる」と地元メディアに語った。
また、ウクライナ情報機関は、プーチン政権がウクライナの東部と南部を分離独立させ、朝鮮半島のような民族分断を狙っているとの分析を公表。ロシアが操る「親ロ派地域」とウクライナ政府の戦闘は長期化し泥沼に陥る恐れもある。
最悪は大量破壊兵器、NATO参戦なら第3次大戦
最悪のシナリオは、ロシア軍が大量破壊兵器を使ってレッドライン(許容できない一線)を越え、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)の加盟国と全面的に軍事衝突する事態だ。
プーチン氏は、日米欧による経済制裁やウクライナへの軍事支援について「ロシアに対する脅威」と強調。ロシア軍が戦局打開を狙って生物・化学兵器を使う可能性は捨てきれない。
ロシアは2月末、核戦略部隊の警戒レベルを引き上げ、核の使用もちらつかせている。ロシア軍が戦術核などを持ち出せば、米欧は国際的な「核の規範」を守るため、報復措置に出ることは避けられない。ジョンソン英首相は21日、「大量破壊兵器を使えば、英国にはNATO加盟国と相談せずに反撃する権利がある」と断言。NATO参戦は第3次大戦を意味する。