民事適用・非公開は違憲 解散命令で家庭連合が主張(世界日報 2025年6月27日 06時09分)
憲法学者の見解を基に争点化も
東京地裁による解散命令を不服とし、東京高裁に即時抗告した世界平和統一家庭連合(旧統一教会、家庭連合)は、6月20日付で主張書面3通を高裁に提出した。その中で、政治学者・仲正昌樹金沢大学教授、憲法学者・小林節慶応義塾大学名誉教授の意見書を基に、解散命令の不当性を主張。教団側は、小林氏の宗教法人法の解散事由の法令違反に民法を含めて適用すること、および非公開での審理は違憲であるとの見解に基づき、状況によっては、違憲性を主張し争う姿勢を示している。(信教の自由取材班)
家庭連合は4月21日に「抗告理由書」を提出し、5月23日に「主張書面」を東京高裁に提出しているが、今回はそれに続くもの。解散請求問題の「本質を理解するために」として、宗教迫害史、法哲学、社会体質などの観点から述べた上で、仲正昌樹氏による地裁決定への批判を紹介している。
政治学者・仲正昌樹金沢大学教授の意見書
仲正氏は
①家庭連合固有の不法行為が特定されておらず、なぜ家庭連合のみが解散命令申し立ての対象とされるのかについて何ら客観的基準も示されないまま解散命令決定が出されたこと
②解散命令への動きが「政治的決定」によること③文科省が偽造捏造(ねつぞう)文書を作成したことを無視したこと
――などを挙げながら地裁決定を批判している。
憲法学者・小林節慶応義塾大学名誉教授の意見書
憲法学者で政教分離問題を専門とする小林節氏は、地裁に意見書「政教分離原則と信教の自由の緊張関係」を提出していたが、地裁の決定に「激しい義憤を覚え」、新たに意見書を提出した。
意見書では、信教の自由は優越的人権であり、その制約は厳格な審査基準によらねばならず、国家が宗教団体に不利益処分を下そうとする場合、法律が定めた厳重かつ適正な手続きに従って判断されなければならないとした上で、宗教法人法81条の「法令に違反して」の規定は、「法令」を刑法と狭く解釈し適用してきたことで合憲たり得たが、「法令」に民法を含めて適用することは違憲であると指摘する。
さらに小林氏は、憲法32条で公正な裁判を受ける権利を保障し、同82条では、国民の権利が問題となっている裁判の対審は公開しなければならないと命じていることを指摘。宗教法人解散命令問題が法律上の「争訟」に当たることは明らかであり、これを「非訟事件手続き」として非公開で行うことは憲法違反であると主張する。
◇
著名な憲法学者の指摘には重みがある。家庭連合は、地裁決定の誤りを正すことを優先するために、非訟事件手続きの違憲性は予備的に主張すると言う一方で、「万一、特別抗告審に進む場合は、上記違憲を全面的に主張して抗告審決定の違憲無効を主張する予定である」としている。
高裁がどのような判断を下すかは、日本の信教の自由の行方を決定付けるものとなりそうだ。