石破政権発足 自民党政治を転換させよ(新潟日報 2024/10/2 6:00)
求められるのは「政治とカネ」の問題を含めた古い自民党政治からの転換だ。挙党態勢とは言い難い船出で党改革を進め、政策を着実に実行できるか、注視したい。
自民党の石破茂総裁が1日、衆参両院本会議の首相指名選挙で第102代首相に選出され、自民、公明両党連立による石破内閣を発足させた。
19人の閣僚のうち初入閣が13人に上る。新鮮な顔触れと言えるが、実力は未知数だ。女性は2人にとどまった。
派閥裏金事件を受けて多くの派閥が解散を決めた中での組閣だった。前日に決まった党役員人事と合わせて見えてくるのは、総裁選の決選投票で石破氏を支援した重鎮や陣営への配慮だ。
菅義偉元首相や岸田文雄前首相に近い議員を多く重用したほか、総裁選で争った林芳正氏を再任で官房長官に、加藤勝信氏を財務相に、小泉進次郎氏を党選挙対策委員長に起用した。
菅氏は党副総裁に据えた。「親石破」とされる森山裕氏は党幹事長、岩屋毅氏は外相に就任した。
石破氏は党内基盤が弱い。新閣僚で新味を出す一方、要所に重鎮やベテランを置いて基盤を固めようとする狙いがうかがえる。
一方、決選投票で対決した高市早苗氏には党総務会長への就任を固辞された。小林鷹之氏には党広報本部長を断られた。
決選投票で高市氏を支援した麻生太郎元首相は党最高顧問に就いたものの、既に溝が見え隠れしている。旧安倍派からの入閣はゼロとなっている。
人口減少や物価高、安全保障環境の変化など、課題は山積している。政策を実行するには今後いかに求心力を高め、挙党態勢を築いていくかが課題となる。
党内の非主流派に身を置いてきたからこそ石破氏には、党改革、政治改革を断行してもらいたい。
気になるのは、石破氏の姿勢に早くも変化が見えることだ。総裁選では早期の衆院解散・総選挙に否定的な見解を示していたが一転、15日公示、27日投開票の日程で衆院選を行うと表明した。
「ぼろが出ないうちに解散すべきだ」とする森山氏らの意向に沿ったとされるが、首相就任前に衆院選日程を明言するのは極めて異例だ。石破氏はかねて、事実上首相が判断する「7条解散」に否定的でもあった。
立憲民主党など野党が「国会軽視」「党利党略の解散権行使だ」と批判するのも当然だ。
石破氏が提唱するアジア版NATO構想や日米地位協定見直し、防災省設置などには異論も根強い。実現できるのか、国民が見ていることを忘れてはならない。
新内閣に本県関係議員はいなかった。県関係の閣僚不在は約12年に及び、政治力の低下を表している。奮起してほしい。