岸田首相の肝いり「4万円定額減税」世論調査発表後に“給与明細記載義務化”に「経営者イジメ」の声(Friday 2024年05月23日)
これほどまで評判が悪い“減税”がかつて存在しただろうか――。
政府は6月から実施する“定額減税”で、給与明細に所得税の減税額を明記するよう企業に義務付けた。報道によって急にアナウンスされ、現場では混乱が広がっている。
定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円の年間計4万円。例えば夫と専業主婦の妻、小中学校の子供が2人いた場合、16万円が減税される。
住民税に関しては減税を実感してもらうために「0円」にして、年間の住民税から減税分を引き、それを11で割った金額を11ヵ月にわたって支払う。こんな計算を政府は“恩を売る”ために民間企業に押し付けた格好だ。
『税理士法人KAJIグループ』加地宏行代表に話を聞いた。
「定額減税の計算方法など、事業者からの問い合わせは非常に増えています。社員の扶養家族をきちんと把握し、そのうえで、控除額を計算し給与明細に反映させなければならない。
給与明細では計算ミスなどがおきれば社員の生活にも関わりますし、二重控除など面倒なミスが起こる可能性もあります。定額減税は毎年あるわけではないのに、計算ソフトをアップデートさせなければならないなど、民間企業にとって非常に負担となっており、混乱を招いています」
ただ加地税理士によると、今回の義務化のアナウンスは1ヵ月前に唐突にされたわけではないという。国税庁は今年2月5日に
『令和6年分所得税の定額減税Q&A』
という案内を公表している。その中には
《給与支払明細書には、実際に控除した月次減税額の金額を「定額減税額(所得税)×××円」、「定額減税×××円」などと、適宜の箇所に記載していただくことになります》
と書かれているのだ。
「こんな書類をPDFで国税庁のHPでシレっと発表されても、忙しい経営者らの中で気付く人は少ない。私たち報道関係者でも一部の新聞が報じるまで全く知らなかったですよ。おそらく各局の世論調査が20日前後に発表されたので、そのあとに意図的に政府関係者が情報をマスコミに流した可能性は高い。
手続きの煩雑さから、経営者などの世間からの反発が大きいことは予期できた。世論調査の前に発表すると、“経営者イジメ”という声が大きくなり、さらに政権の支持率が落ちる事態になりかねないですからね」(テレビ局関係者)
当然、雇われている会社員とすれば、給与明細から税金が引かれていないとなると嬉しく思う人は多いだろう。経営者と雇用者の数を天秤にかけ、経営者には負担を強いることに決めたのだろう。
だがSNSなどでは
《たかだか4万程度の減税で何をほざいているのか? どれだけ物価が上がっていると思っているの?》
《“増税クソメガネ”と言われたことを気にして給付じゃなく減税にしただけだろ!》
などと、岸田首相へ厳しい意見も多い。
“減税の岸田”をアピールしたかったのかもしれないが、国民の気持ちを掴むのは、なかなか難しいようだ――。