評判の悪い「4万円減税」の黒幕が判明…増税メガネ・岸田総理が作りたい“浅はかな構図”とは(デイリー新潮 2023年11月01日)
永田町が岸田文雄総理のぶち上げた減税策で揺れている。政府は一人当たり4万円の定額減税を行うとともに住民税の非課税世帯には7万円を給付するというが、早速与党の面々は大反対の大合唱。その黒幕はやはりあの男だった。
財務省との対決
政府は11月2日に閣議決定する予定の経済対策に、この減税策を盛り込む予定だ。その中身は、与党や税制調査会での議論が始まる前だというのに、すでに概要が明らかになっている。今回の経済対策では1人あたり4万円の減税が予定されており、その内訳は所得税が3万円、住民税が1万円。約9000万人の国民が対象になる。また、住民税が非課税となっている低所得者世帯には7万円の給付を行う方針だ。減税は来年6月に実施される。
岸田総理は10月26日の政府与党政策懇談会で、
「国民の負担を緩和するには、直接的に下支えする所得税、個人住民税の減税が最も望ましい」
と、発言。自らぶち上げた政策に意欲を見せた。
これまで“増税メガネ”とネット上で揶揄されてきた岸田総理はなぜこのタイミングで減税を打ち出したのか。実は、官邸の総理側近は今回の案について、周囲にこう説明している。
「1年の減税だけれども、来年の賃上げが達成された後に減税になるので、国民は効果をかなり感じるはずだ。実感できるくらいの額を税で引かれることになるから。だから賃上げも大事なんだ」
「財務省は今回の政策を相当嫌悪していますよ。政権はこれまで財務省に近いと言われてきた。増税メガネとか言われてね。じゃあ、政権が一番やりたいことは何か。それは経済。だから減税なんです。狙いは財務省対政権の対立構図を作り、国民の支持を集めること。もちろん、財務省との対決は支持率を上げるためのポーズで、財務省とは一緒にやっていくわけだけど」
岸田総理率いる宏池会(岸田派)は宮沢喜一元総理など、財務省出身者が多いことで知られる。総理自身も財務省に近いとされ、「財務省にベッタリ」などと言われてきた。今回の政策で“脱財務省”を図り、新たな「岸田像」を印象づけたいというわけだ。
“還元する”というアイデア
確かに、10月23日に行われた所信表明演説では「経済」という言葉が総理の口から29回も連呼された。
政治部デスクが解説する。
「これは岸田総理の強い意向が反映されていたようです。こんなに多く“経済”という言葉を入れなくても、という側近のアドバイスがあったものの、結局残すことになった。総理は今年の前半はこれまでの政権が先送りしてきた防衛増税やこども政策などに力を入れてきた。しかし、支持率が上昇する兆しはまったく見えず、経済政策に力を入れざるを得なくなった。そこで岸田政権独自の政策として減税を掲げたのです」
しかし、自民党幹部からは総スカン状態だった。
「10月18日には、“三頭政治”と言われてきた麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長に加え、森山裕総務会長、萩生田光一政調会長、小渕優子選対委員長の6名による『6者会合』を党本部で開きました。しかし、出席者のほとんどは効果への疑問から減税策に反対。25日の代表質問では自民党参院幹事長の世耕弘成さんが“総理が何をやろうとしているのか、全く伝わらなかった”と発言し、大きく報じられました」(同)
では、この減税策は一体誰の発案なのか。
「総理の懐刀である幹事長代理、木原誠二さんです」
とは自民党関係者。
「岸田総理は9月25日に記者団に“成長の成果である税収増を国民に適切に還元する”と説明し、10月中の経済対策策定を与党に指示しています。実はこの税収を“還元する”というアイデアを総理に授けたのが、木原さんでした。総理もこの間、自身が“増税メガネ”と呼ばれることに非常に嫌悪感を示しており、この案に飛びついた。結果、総理、木原さん、嶋田隆総理秘書官という3人で減税策を決めていったと見られています。自民党内の議論の前にすでに案ができているのは、根回しして、財務省に作らせたのでしょう」
“解散するのはやめてくれ”
これまで官邸で権勢を振るってきた木原氏にとっては、岸田政権の浮沈は自身の今後にも関わる重大な問題だ。
「木原さんは減税で政権浮揚が可能だ、という判断で提案したのだと思います。しかも、自身は『週刊文春』による“木原事件報道”で次期衆院選が厳しくなるのは目に見えています。官房副長官という官邸の激務を離れ、家族と過ごす時間もできたそうですが、周囲に“総理にいま解散するのはやめてくれないかと言ったんだよ”と話しています。それが本気なのか、冗談なのかはともかく、いま解散されたら困るのは木原さんです。そこで減税策が世論に受ければ、自身の選挙にも有利に働き、当選すれば禊も済ませられる。ただ、この減税策は党内はおろか世論にも受けも悪く、最近の木原さんは不機嫌極まりないですね」
デイリー新潮編集部