維新はこのまま野党第1党になれる? 野心的な「計画」とその達成度 躍進の影に不祥事、問題が続発

4月の統一選で応援演説をする日本維新の会の馬場伸幸代表=東京都北区で 政治・経済

維新はこのまま野党第1党になれる? 野心的な「計画」とその達成度 躍進の影に不祥事、問題が続発(東京新聞 2023年7月11日 06時00分)


<連載・維新点検>㊤増す勢い、目立つほころび

日本維新の会代表の馬場伸幸は誇らしげだった。

「爆発的に伸びている」

6月上旬の記者会見で次期衆院選の擁立状況を問われ、希望者が殺到する現状をそう表現した。

党勢拡大のプランを順調にクリア

公認候補予定者は既に100人近く。野党第1党・立憲民主党の約150人も射程に入れ、最終的には289の小選挙区全てに立てる構えだ。維新からの出馬をにらみ、他党の現職議員が無所属になる動きも表面化している。

馬場が自信を深めるのには理由がある。昨年3月に党勢拡大の道筋などを示した「中期経営計画」(中経)の目標を順調にクリアしているからだ。

日本維新の会の中期経営計画
日本維新の会が国政政党として10年の節目を迎えた2022年3月に策定。党を民間企業に例えて「『ベンチャー企業、地域限定企業』から『上場準備企業、全国展開企業』への戦略的飛躍」を宣言。22年7月の参院選、23年4月の統一地方選での当選者数の具体的な目標を盛り込んだほか、選挙対策や広報を担う党本部の機能強化も掲げた。23年2月の改訂では「これからの10年 衆院選3回以内での政権奪取」も明記された。

地域政党から脱皮 統一選で全国政党化に前進

中経では、2022年7月の参院選で「12人以上の当選」を掲げ、12議席を獲得。非改選を合わせた議席数は15から21に伸びた。中経発表時の1.5倍に当たる600人以上の地方議員確保を目標とした今年4月の統一地方選では、地域政党「大阪維新の会」を含めて774議席に躍進した。

維新の地方議員の勢力分布

残る具体的な目標は、次期衆院選で「野党第1党を獲得」だけに。中経には「名実ともに自公政権に対抗する、もう一つの選択肢」とも明記し、将来的な政権奪取の野心を隠さない。

維新は、2009年に大阪府議会の自民党会派を割った松井一郎(前大阪市長)と、当時の府知事の橋下徹らが翌10年に結成した「大阪維新の会」を源流とする。大阪をはじめ、関西では高い人気を維持する一方、他の地域では足場を築けていなかった。

だが、今年4月の統一地方選では、地方議員がいる都道府県は29から37に増加。特に関東の勢力拡大が際立ち、東京都では区市町議選に70人が挑み67人が当選した。4年前はゼロだった神奈川など5県議選と横浜など5政令市議選では、37人が議席を得た。国政選挙で集票活動に取り組む実動部隊が増強され、「全国政党化」に向けた基盤整備が進む。

最近の世論調査では、政党支持率や次期衆院選の比例投票先で立民を上回り、自民党に次ぐ2位が定位置だ。昨年の参院選でも、比例票は立民より100万票以上多い784万票を集めた。今年4月の衆参5補欠選挙は、衆院和歌山1区で野党として唯一の勝利を引き寄せた。

6月には、次期衆院選に公明党現職がいる大阪、兵庫の計6選挙区で対抗馬擁立を決定。与党の一翼を担う公明との対決姿勢を鮮明にし、与党内には強い危機感が広がる。

国会で不適切発言、セクハラ…党運営に厳しい視線

ただ、急拡大の裏でほころびも目立つ。今年だけでも、名古屋市の入管施設で死亡したスリランカ人女性を巡る不適切な国会質問を繰り返した参院議員への党員資格停止や、同僚議員に対するセクハラなどを理由とした大阪府議の除名などの処分が相次いだ。いずれも事前に党幹部が把握しながら、十分な対応を取らなかったことが分かっている。議員の資質や党運営に向けられる視線は厳しい。

関西学院大教授(政治行動論)の善教将大(ぜんきょうまさひろ)は「維新は国政政党として未成熟。党のガバナンス(統治)を確立できなければ、政権を担うほどの支持拡大は望めない」と指摘する。(敬称略)

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日本維新の会の母体となる地域政党が発足してから13年、国政でも与野党から警戒される存在となった。次期衆院選で政界の勢力図を塗り替えようとする政党は、どんな社会を目指すのか。3回にわたり点検する。(この連載は、我那覇圭、大野暢子が担当します)