参院選「全選挙区当落予測」

与野党8党首が討論 “物価高”や“消費税”など議論 政治・経済

参院選「全選挙区当落予測」(AERA 2025/07/01/ 07:00)

夏の参院選は事実上の「政権選択選挙」となる。政権与党は過半数を維持できるのか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏と青山和弘氏が全選挙区の情勢を分析した。

青山 自民は東北で弱いですからね。今、小泉進次郎農林水産大臣が5キロ2千円台の備蓄米を大放出していて、農家の間ではコメ価格の下がり過ぎに不安感が広がっています。それも米どころの東北において自民候補への逆風になりかねません。自民がギリギリ勝てるとすると、森雅子元法務大臣が出馬する福島くらいでは。

角谷 山形の自民候補は、過去に県知事選や参院選に出馬している大内理加氏ですが、いずれも結果が出ておらず、今回が最後の挑戦でしょう。

青山 激戦なのは、やはり東京です。私は、自民の武見敬三氏、立憲の奥村政佳氏、国民の奥村祥大氏、維新の音喜多駿氏、参政のさや氏を当落線上に置きました。音喜多氏に関しては、知名度を生かしてよほど伸びればという条件付きの△ですね。

角谷 私は、武見氏とれいわの山本譲司氏と国民の牛田茉友氏がすべり込むのではないかとみています。山本氏は出馬表明が遅れたとはいえ、れいわは東京が大票田で底力があります。牛田氏は当初は注目度が高かったものの、元アナウンサーながら演説があまり上手ではない。正直判断が難しいです。

青山 前厚生労働大臣の武見氏は73歳と高齢で、もう引退するとみられていました。空いた枠は(元自民党幹事長の)石原伸晃氏が狙っていましたが、結局武見氏が出ることになった。自民の候補者が不足している感は否めません。

角谷 京都は、元衆院議長の伊吹文明氏や、共産で10選してきた元国会対策委員長の穀田恵二氏が引退したので、大物がいない状況ですね。そうなるとやはり、自民の西田昌司氏が強い。今年5月に沖縄のひめゆりの塔をめぐる不適切発言があり、謝罪と撤回に追い込まれましたが、西田氏は以前から舌禍を招きがちな人と見られているので、影響は限定的だと思います。

青山 立憲、維新、共産が乱立していることも、西田氏を助ける方向に働いています。

角谷 最終的に2議席目は維新の新実彰平氏が抜け出すかな。共産は、やはり穀田氏が引退したことで勢いが落ちた印象があります。

青山 大阪は大激戦ですね。

角谷 今回も維新が2議席取ると思いますよ。次いで公明。最後のイスを立憲の橋口玲氏と自民の柳本顕氏が競る構図でしょうが、柳本氏に軍配が上がりそうです。

青山 私は柳本氏と維新の岡崎太氏が競るかなと思い、どちらも△にしました。立憲は大阪では人気がないし、国民は初め足立康史氏の擁立も検討しましたが、結果的に知名度のない候補になり、出遅れは否めません。公明は○にしましたが、去年の衆院選は大阪4選挙区で全敗していますし、意外と苦戦する可能性もあります。

青山 和歌山には、二階俊博元自民党幹事長の三男である伸康氏が出馬します。昨年の衆院選では落選しましたが、角谷さんは○をつけていますね。

角谷 たしかに二階氏が出ると決まった時、自民党本部の人は「あ、出るの?」と意外そうな顔をしていました(笑)。一方、対抗馬が党勢の落ちている維新の候補となると、二階氏で堅そうです。

青山 私は、立憲と維新の候補者調整が成功して一本化したことで、維新の浦平美博氏が逆転する可能性があるとみています。立憲和歌山県連は、擁立取りやめについて「和歌山でリベラルな考えを持つ方の投票先はほぼなくなった」と、党本部への不満を漏らしていましたが、リベラル層にも「自民党でなければよい」という考えの人は一定数いるので、維新に票が流れるでしょう。

角谷 鹿児島は森山裕幹事長のお膝元ですから、自民としては落とすわけにはいかないという空気があります。ただ、無所属の尾辻朋実氏は、すでに引退表明した自民の尾辻秀久前参院議長の三女です。朋実氏は当然自民から出馬するつもりだったのですが、公募で拒否され、県内に禍根が残っている。最後は朋実氏が競り勝つかもしれません。

青山 選挙区票の見どころは、1人区において自民がどこまで票を伸ばせるかです。山梨や新潟など、接戦の区を次々ひっくり返していくようだと、自民が快勝する可能性もある。立憲と共産は1人区での候補者一本化に向けて動いており、調整が進めば自民にとっては脅威です。ただ、あまり大々的にやると、立憲は“立憲共産党”と揶揄され、支持者離れにつながりかねません。

角谷 立憲は複数区では粘りを見せるでしょうが、党としての勢いはないですね。

青山 政党支持率が回復してきたことで、自民内部は余裕ムードが漂っていましたが、都議選の結果で冷や水を浴びせられた形です。現状では、自民の比例議席は13か14くらいにとどまるのではないかと思います。

角谷 自民は選挙区と比例を合わせて50議席手前を取れれば善戦と評価され、よほどの大失敗をしない限り、党内で石破おろしが加速することはないでしょう。

青山 反対に、失速に歯止めがかからないのが国民ですね。山尾志桜里氏の公認をめぐる一連の騒動がなければ、比例議席は8か9は取れたと思います。今後の状況次第では、7も取れないかもしれない。

青山 維新も厳しそうですね。何より、今の維新にはゆるゆるとした雰囲気が漂っています。

角谷 今まで維新を応援していた保守層の票を吸い込みつつあるのが、参政です。そして共産を応援していたリベラル層を取り込んでいるのが、れいわ。右派の参政と左派のれいわが、それぞれ既成政党の票を食いに来ている。