<独自>安倍派幹部、虚偽説明認識か 政策活動費、支給痕跡なし(産経新聞 2023/12/27 00:01)
自民党の派閥のパーティー収入不記載事件で、安倍派(清和政策研究会)が所属議員にキックバック(還流)した分の原資として説明していた党からの「政策活動費」が派閥に支給された痕跡がないことが26日、政治資金収支報告書の分析で分かった。安倍派の説明が虚偽の可能性が高まった。東京地検特捜部は、同派幹部も虚偽説明だと認識していた疑いがあるとみているもようだ。
政策活動費は政党から政治家個人に支出される政治資金で、収支報告書に記載する必要がない。
パーティー収入を巡っては安倍派以外の4派閥も収入の一部を議員に還流していたが、収支報告書に「寄付」として記載していた。仮に安倍派の還流分が政策活動費だったとすれば、同派のみが還流分に相当する額の政策活動費を毎年、党から同派幹部が受け取り、個々の議員に配分していたことになる。
産経新聞は平成30年~令和4年の自民党の収支報告書を分析。政策活動費が支給された議員の所属派閥別、党の役職別の支給額を集計し、年ごとの変動を検証した。
派閥ごとの変動は一貫性がなく、所属議員が幹事長など党の要職に起用されると、支給額が跳ね上がる傾向がみられた。党の役職ごとの支給額は、衆院選の年は増えるなどの変動はあったものの、役職に応じて一定の幅の金額で支給されている傾向が確認できた。
安倍派は幹部に対する政策活動費の支出はあったものの、いずれも党の役職就任時。安倍派として支給された痕跡は確認できず、政策活動費は派閥別ではなく、党の役職別に支給されていたとみられる。
還流名目に使用「詭弁」 専門家指摘
そもそも政策活動費とは何なのか。専門家は「還流分が政策活動費というのは詭弁(きべん)だ」と指摘する。
「政策活動費は使途の報告義務がない、いわば政党の裏金だ」
政治資金規正法に詳しい日本大の岩井奉信名誉教授は政策活動費について、こう説明する。
政策活動費は各政党から政治家個人に支給される政治資金で、組織活動費とも呼ばれる。政治資金規正法が政治家個人への寄付を禁じるなかで、例外的に政党から政治家個人への寄付は認めているのが根拠だ。
政策活動費について政党は支出した議員名や金額、日付などを党の収支報告書に記載する義務がある。一方、受け取った政治家は、通常の寄付と違い、受け取ったことやその使い道を報告する義務はない。
自民党の派閥のパーティー収入不記載事件で、安倍派がパーティー券の販売ノルマを超えた分を還流する際に「政策活動費なので記載する必要がない」と議員や秘書に説明していたのも、そうした性質を踏まえたものだ。
ただ、岩井氏はこの説明について「言い逃れの詭弁だ」と指摘する。
そもそも政策活動費は、政党から派閥に直接支給できない。平成30年~令和4年分の自民党の収支報告書に記載された政策活動費の変動を分析する限り、政策活動費は党の役職に準じて支給されているとみられる。
5年間の政策活動費の支給総額は66億円。うち45億円は幹事長だ。他には国対委員長、選対委員長など党の役職者に数億円程度が支給されている。衆院選の年に選対委員長への支給が増えるなどしており、選挙関連にも支出されているとみられるが、政治家が派閥の会長や事務総長として支給を受けた形跡はない。
岩井氏は、仮に党から安倍派を経由して議員に政策活動費が支給されていたとしても「安倍派から政治家の関連団体への寄付となり、収支報告書に記載しなければ虚偽記載になりうる」と分析。「還流分を政策活動費という名目で渡すという理屈は検察には通らない」とみている。(久原昂也、星直人、川島優治、山本玲)